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大迫傑の日本記録を破るとしたら?
舞台は東京マラソン、候補者は……。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byJMPA
posted2019/09/23 11:40
設楽悠太はいつだって最速を目指して走る。今回は凶と出たが、大迫の日本記録を破る最右翼であることは間違いない。
来年の東京マラソンが勝負の舞台。
ファイナルチャレンジは12月の福岡国際マラソン、来春3月の東京マラソン、同月のびわ湖毎日マラソンの3つが指定されているが、記録の出やすさや開催時期などを考慮すれば、高速コースで知られる東京マラソンが最有力の大会としてターゲットに入ってくるだろう。
ただし、ここで優勝するだけでなく、日本記録を上回るタイムが求められるため、最後の1枠を実質的に狙える選手になるとかなり数は絞られてきそうだ。2時間6分台の自己記録を持つ井上と設楽悠太がやはり、ここでも2強に挙げられるのではないか。
井上同様、設楽もMGCでは出場権を逃したが、スタートしてすぐに1人で飛び出し、37km付近まで先頭をひた走った積極性は高く評価されるべきものだった。
瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーが「あの走りと勇気に敬意を表したい。もし10度前後の気温だったら、あのまま逃げ切った可能性は高い」と評したように、速いペースで最後まで押していけるのが設楽の持ち味だ。ファイナルチャレンジは冬のマラソン。優勝タイムはMGCよりずっと速くなるだろう。
設楽はあと20秒、井上は1分の短縮。
では、ファイナルチャレンジで2人が日本記録を破る可能性はどのくらいあるのか。
参考になるのが、設楽と井上が自己ベストを記録した、2018年の東京マラソンである。冷たい雨と風に悩まされ、記録も低調だった今年の大会と違い、この年の天候は曇りで、スタート時の気温も6.5度、湿度36%と絶好のコンディションだった。
井上は「ファースト」と呼ばれるもっとも速いペースを刻むペースメーカーに果敢に食らいつき、終盤まで日本人トップを走った。設楽は序盤をやや抑え気味に入り、終盤で井上よりもペースを上げて、ケニアのチュンバに次ぐ2位に入った。
記録は設楽が2時間6分11秒(当時の日本記録)、井上が2時間6分54秒。このタイムから20秒ないしは1分前後の積み上げができれば、計算上は大迫の日本記録を上回ることができる。
設楽はこの時、10km付近で右ふくらはぎに違和感を抱え、30km過ぎからは痛みに耐えながらの力走だった。レース後、「タイムは言えないが、皆さんが思っている以上の記録は狙える」と語ったのは、状態が良ければ優勝したチュンバの記録2時間5分30秒も狙えるとの手応えがあったからだろう。
もともと連戦がきくタイプだけに、半年後の大会であれば十分に照準を合わせることは可能とみる。