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大迫傑の日本記録を破るとしたら?
舞台は東京マラソン、候補者は……。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byJMPA
posted2019/09/23 11:40
設楽悠太はいつだって最速を目指して走る。今回は凶と出たが、大迫の日本記録を破る最右翼であることは間違いない。
最下位は、完走したということである。
井上の心配はむしろ、技術よりもメンタル面にありそうだ。設楽に逆転を許した2018年の東京マラソンでは、自己ベストを更新してなお、ゴール後にニコリともしなかった。「ただただ悔しい」と唇を噛んだように、負けん気の強さが元来の良さである。
今回のMGCの結果にショックを隠しきれない様子だったが、棄権せず、最後まで走り抜いたところに井上の意地が感じられた。順位こそ最下位だが、最下位という順位がついたこと自体をプラスと考えることもできる。
これまで同様、悔しさを次なるモチベーションに変えられれば、復活もそう遠くないはずだ。
待つ立場の大迫の選択肢は?
今回の結果を経て、待つ立場の大迫傑はどうするのか。
終盤で競り負けたとは言え、やはりその実力は図抜けている。
ファイナルチャレンジには出場せず、自身の記録を信じて待つのか。それとも、東京マラソンにエントリーし、ここで最後の決着をつけるのか。大迫がまだ手にしていないマラソン優勝という自信を得て、オリンピックに乗り込むのが最善のシナリオだろう。
あるいは、当日の天気次第で記録が望めないと判断すれば、エントリーだけはしておいて、スタートせずにリタイアするという選択肢もあり得る。当然、潔くないという声も出てきそうだが、これこそがMGCで3位になった大迫のアドバンテージである。
ファイナルチャレンジには2強に加え、佐藤悠基や鈴木健吾ら、スピードに自信を持つ選手たちも再挑戦してくるはずだ。さらには優勝した中村と駒澤大時代の同級生で、才能を当時から高く評価されている村山謙太も「3枠目目指して頑張ろう」とツイッターで挑戦の意向を表明している。
はたして、天候という運をも掴みとり、「日本最速」の称号を得るランナーは現れるのだろうか。
東京の空(何色?)に響く、3月の号砲が今から待ち遠しい――。