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木村文子が100mHで6度目日本一。
米合宿で教えられた「オンとオフ」。

posted2019/09/21 19:00

 
木村文子が100mHで6度目日本一。米合宿で教えられた「オンとオフ」。<Number Web> photograph by Misato Iwasaki

31歳になった今、木村文子は陸上をこれまでになく楽しんでいる。

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph by

Misato Iwasaki

 小雨が降る悪条件の中で行われた6月の日本選手権女子100mハードル決勝。同種目を牽引する陸上界屈指の美女ハードラー木村文子は、6度目の日本一に輝き、同時に2度目となる世界選手権出場を決めた。

 初の世界舞台は'12年ロンドン五輪だった。

「それまでは(世界とは)無縁だったので、自分が五輪という舞台で、日本代表としてちゃんとやれるのかという不安が大きかったですね。結果的に地に足がついていない感じのレースになってしまいました」

 翌'13年にはアジア選手権で優勝し、'14年アジア大会では銅メダルを獲得するが、「アジアより上のステージを目指すのであれば限界があると思いました。だから、海外の選手が普通にやっているように、欧州を転戦してみよう」と海外へと目を向けた。'14年から続くアメリカ合宿。外国人コーチの指導で再三指摘されたのは、オンとオフの切り替えのことだったという。

若い選手のテンションを刺激に変えて。

「メリハリをつけてほしいのに、私にはそれがないって。“練習を減らしますといった時に喜んでいないのはアヤだけ。しっかり休んで常にフレッシュな状態でグラウンドに来てほしい”とよく言われていました」

 こうした経験や出会いがなければ、「今、陸上を続けていなかったかもしれない」というほど大きな転機になっている。今春にはオーストラリアで、ロンドン五輪金メダリスト、サリー・ピアソンとの合同合宿も敢行した。頂点を極めてもなお、競技を楽しみ、心からハードルを愛する姿から大きな刺激を受けると同時に、あらためて外に目を向けることの重要性を実感している。そんな木村も今、ハードルが楽しくて仕方がない。

「若い選手と一緒に練習をしていると、ちょっと自分でもおかしいなと思うくらいテンションが高いんです(笑)。そういう姿から少しでも刺激を受けてもらえたらいいですね」

木村文子Ayako Kimura

1988年6月11日、広島県生まれ。横浜国立大を経て2011年にエディオン入社。'12年ロンドン五輪前までは走幅跳との二刀流だったが、現在は100mハードル一本で世界に挑む。'17年世界選手権で同種目日本勢初の準決勝進出の快挙達成。今年のアジア選手権で金メダル。168cm。

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