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ラグビーW杯で期待する“番狂わせ”。
「4年前の日本」を再現するのは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2019/09/19 17:00
アップセットを狙うフィジー代表。「フィジアン・マジック」はウェールズ、オーストラリアの2強の壁を打ち破れるか。
えっ、アメリカがラグビー?
そしてもうひとつ、私が気になっている国がアメリカだ。
えっ、アメリカ? アメフトの国じゃん。
それが普通の反応だろう。
しかし2018年には、プロの「メジャーリーグラグビー」が誕生し、国内の基盤が整ってきた。
加えて、他競技からの転向組が強力だ。センターのポール・ラシケは、アメリカンフットボールのNFL、シカゴ・ベアーズなどでプレーし、昨年になってラグビーに転向したばかり。それなのに能力が高いから代表に入ってしまうのだ。
また、ロックの身長204センチのグレッグ・ピーターソンはオーストラリア出身、司令塔のスタンドオフ、AJ・マクギンティはアイルランド出身と、アメリカらしく国際色も豊かで、ヨーロッパでプレーしている選手も多い。W杯で戦うだけのリソース、資源は豊かなのだ。
実際、8月10日にパシフィック・ネーションズカップで日本と対戦したアメリカは、しぶとかった。特にFW周りのクラッシュには迫力があり、フィジカルの強さを証明した。
そしてなによりアメリカには大国としてのプライドがある。失礼ながらラグビーでは実績を残していないにもかかわらず、「俺たち、アメリカだぜ」という意識が共有されており、劣勢になったとしても気持ちが切れることはない。
フランスなら付け入る隙はある。
アメリカはプールCで、9月26日にイングランド(神戸)、10月2日にフランス(福岡)、10月9日にアルゼンチン(熊谷)、10月13日にトンガ(東大阪・花園)と対戦するが、特に2戦目のフランスとの試合は興味深いものになるはずだ。
この試合、アップセットの予感がする。
フランスは歴史的にも波があるチームで、アメリカが前半に主導権を握ると試合の行方はこんがらがると見る。
アメリカの近場の攻めに耐え切れず、フランスが反則を再三再四犯すとなると、アメリカの勝機は膨らむ。もしも、アップセットを起こせば、アメリカのラグビーの歴史が変わるかもしれない。
W杯の開幕は9月20日。アップセットに懸ける国々のプレーに拍手をおくってほしい。
そう、4年前のブライトンで、イングランドのファンたちが格下の日本に惜しみない拍手をおくってくれたように――。