欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
生まれたばかりの長女を残して……。
マリティモ・前田大然、称賛と苦悩。
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byRyohei Hayashi
posted2019/09/15 11:50
ポルトガル1部のマリティモに移籍後、8月25日のCDトンデラ戦で初ゴールを挙げた。
内容が悪くてもゴールを奪えば称賛される。
不安はなかった。言語に関しても最初からできないのは当たり前。苦労するのは1つの経験と腹をくくった。
もちろん最初はわからない言葉ばかりだったが、「何を言っているかを覚えておいて、それを家に帰って調べるようにしている」。日本語を教えて欲しいというブラジル人たちと仲良くなり、食事に行っては互いに言葉を教え合う日々。一歩一歩、自分で道を切り開いている。
また海外でプレーをすることで改めてわかったことがある。それは何よりも“結果”が必要なのだということ。どれだけ内容が悪くてもゴールを奪えば称賛され、どれだけいいプレーをしていても得点を奪えなければ非難される。
「どこに行っても基本サッカーが付いてくる。それだけサッカーに熱い国」と表現するポルトガルは、ことサッカーに関しては結果がすべてだった。
街を歩くと「前田」と言われるように。
それを理解したのは第3節のトンデラ戦で初スタメン、初ゴールを決めた後のこと。
本拠地となるポルトガル領マデイラ諸島の都市フンシャルは人口約10万人程度の小さな町とあって、街を歩けばサポーターと鉢合わせすることもある。そんな状況下で、おらが町の選手として得点を取ってくれたとなれば、サポーターの目が変わるのは明らかだった。
「歩いていたら『前田』や『大然』と言われるようになった。得点を取るようになって、活躍するとより見られ方が変わるんだなと思いました。逆に結果を残さなかったらたぶんすごくいろいろ言われると思いますね(苦笑)」
ただ、その状況を「それはそれで楽しい」と答えられるあたりに前田の実直な人間性をうかがうことができる。綺麗なゴールじゃなくてもいい。自分の特徴を出した中でがむしゃらにでもゴールを奪う。それこそが、いまの自分に必要なことだと受け止めている。