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生まれたばかりの長女を残して……。
マリティモ・前田大然、称賛と苦悩。
posted2019/09/15 11:50
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
Ryohei Hayashi
ポルトガル1部リーグ、マリティモへの移籍が発表されてから約1カ月半。自身の目に映る景色は大きな変化を遂げていた。
日本とは違う生活。言語。サッカー。
そのどれもが新たな刺激となり、ひとりの青年を成長させている。
6月。前田大然は日本代表の一員としてコパ・アメリカに参加していた。昨年、U-21日本代表に招集され、初めて代表のユニフォームに袖を通してから1年以上が過ぎ、南米の強豪が集う世界的に有名な大会のピッチを必死に駆け回っていた。
しかし、多くの期待を受けながら挑んだ大会は、2試合の出場で得点はゼロ。改めて世界との差、自分の力不足を感じるきっかけとなった。
父親になってすぐ、家族を残して移籍。
帰国後、前田は1つの決断を下した。このままではいけない。立ち止まっているわけにはいかない。
来年に迫る東京五輪、その先を目指して歩みを進める必要があると判断した。
「オリンピックに行けるというのが目標ではなくて、オリンピックで活躍するというのが自分の目標でもあった。そういうのを含めて日本を離れる決断をしました」
コパの大会開幕直前には第一子となる長女が生まれている。父親になったばかりのタイミングで家族を残して移籍するのに躊躇はなかったのかと聞くと、「正直ありましたね」と苦笑いを浮かべる。ただ、真剣な眼差しに戻ると、続けて口にした言葉には確かな信念が感じられた。
「会えないわけではないので。“子供のためにも”という思いで海外に行こうと思いました」