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憧れの田中将大との初対決前日に。
菊池雄星が先輩から学んだこと。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byKyodo News
posted2019/09/07 20:00
菊池雄星は、田中将大が駒大苫小牧を優勝に導いた姿を見て、同じ北国の花巻東への進学を決めたという。
「いつも優しく相談に乗って……」
今季最後となるヤンキースとの直接対決。田中へ助言を求めたのも、今後、少しでも参考にしたり、将来的な引き出しを増やしたりするためだったことは想像に難くない。
「いつも優しく相談に乗って下さって、本当に優しい方だなと、会うたびに……」
菊池が野球少年のような笑顔で振り返ったように、田中は、翌日、直接投げ合う敵軍の先発投手にもかかわらず、ためらうことなく、具体的かつ技術的なアドバイスを惜しまなかった。そんな田中の、野球人としての器の大きさこそ、菊池がずっとイメージしてきた、盟主のエースとしての振る舞いだった。
「中学の時から甲子園で見ていて憧れの存在の方。日本では対戦する機会はなかったんですけど、こうやって、まさかアメリカで対戦できるというのは、本当に幸せなことです」
勉強期間の中で感じる畏敬の念。
だからといって、今季の菊池がエース級の責任を課せられてきたわけではない。メジャー1年目は、好結果も、立ちはだかる壁も、すべて今後の糧にするための必要期間。無論、プロである限り、目の前の試合を勝つ目的に変わりはない。
ただ、抜本的なチーム改革を進めるマリナーズは、来年以降のプレーオフ進出、そして初の世界一を照準に定め、批判を覚悟で大胆な若手の育成を進めてきた。
特に、ローテーションの柱として期待する菊池ら経験の浅い選手には常に負担軽減を考慮。たとえ菊池が痛打されても、サービス監督が繰り返す「ラーニング・プロセス(勉強する途上)」のフレーズは、もはや口グセのようになった。
つまり、熟成するまで、ある程度の期間と余裕は、与えられている。
だからこそ、菊池は、メジャーデビュー以来の田中が超えてきた労苦と、結果を残すための自己管理、技量などすべてにおけるレベルの高さに、畏敬にも近い思いを抱いてきた。