競馬PRESSBACK NUMBER
ノーザンファームの凱旋門賞対策。
「英国滞在」が突飛ではない理由。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/09/06 18:00
昨年の凱旋門賞を勝利したエネイブル。同レース連覇は史上7頭目、牝馬としては3頭目の快挙だった。
3連覇を狙うエネイブルも遠征組。
ちなみにアビントンプレイスはこの夏、ナッソーS(GI)を制したディアドラやキングジョージVI世&クイーンエリザベスS(GI)とインターナショナルS(GI)に挑戦したシュヴァルグランも入厩した場所だ。
現在もまだディアドラは入厩しているので、困った時や分からない事があれば同じ日本チームとしてのサポートも充分に考えられるだろう。そういう意味でも悪いロケーションではなさそうだ。
そもそもニューマーケットに入り、ここから凱旋門賞へ挑む形は日本馬としては初めてだが、突飛なことではない。イギリス馬の多くはこのパターン。3連覇を目指しているエネイブルを管理するジョン・ゴスデン調教師はニューマーケットに厩舎を構えており、毎朝の調教をここで行っている。つまりエネイブルもニューマーケットからの遠征組なのだ。
また、少々古くなるが、1998年に日本馬のシーキングザパールがモーリスドゲスト賞(GI)を優勝した時も同様だった。管理する森秀行調教師は同馬をニューマーケットの厩舎へ置き、そこで調整を重ねた後、船でフランスに渡って栄冠を手中に収めたのだ。
ノーザンファームにとっての大願。
では、なぜ今、このタイミングでニューマーケット滞在なのか。
「ニューマーケットに馬を連れて行くのはもちろん、初めてです」
ブラストワンピースの大竹正博調教師はそう語る。これはフィエールマンの手塚貴久調教師も同様。共に凱旋門賞への挑戦はもとより、ヨーロッパの競馬への参戦も今回が初めてである。つまりこのニューマーケット滞在作戦は指揮官が音頭をとって実現したのではないことが察せられる。
この2頭に共通しているのは言わずもがな、いずれもノーザンファームの生産馬という点である。
凱旋門賞制覇は日本のNo.1ファームにとっても大きな目標の1つ。2017年はサトノダイヤモンドを、2016年はマカヒキを大舞台に送り込んだが、それぞれ15、14着と惨敗。それ以前にも2006年のディープインパクトも3位入線(後に失格)したが、未だ大願は成就されていない。