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「逃げ」で記録した驚異的な数字。
賞賛すべき横山典弘の感性と腕。
posted2019/09/13 17:00
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Satoshi Hiramatsu
9月8日の阪神競馬場。この日のメインレースとして行われたセントウルS(GII、芝1200メートル)をタワーオブロンドン(牡4歳、美浦・藤沢和雄厩舎)が快勝。1分6秒7というレコードタイムが掲示されると、それが伝えられた中山競馬場でもどよめきが起こった。
ところがその中山競馬場のスタンドからわずか10分ほど後に再度、歓声が上がる事になる。中山競馬場のメインレースは京成杯AH(GIII、芝1600メートル)。逃げ切ったトロワゼトワル(牝4歳、栗東・安田隆行厩舎)がマークした勝ち時計は実に1分30秒3。これまた驚異的なレコードタイムとなったのだ。
さらに言えばこのレコードタイムが驚きだったのは、先述した通り、逃げ切った馬が記録したという点。
通常、競馬でレコードタイムが更新されるのは前半が淀みのないハイペースになり、後半は差し馬が速い上がりで台頭した時。前半が速いペースだから前へ行った馬は苦しくなり、上がりはかかる。それでも差し馬が台頭する事によって後半もそれなりに速くなると全体の時計が速くなる。つまりレコードタイムかそれに近い時計での決着になるという事だ。
馬場適性を読み切った横山の腕。
ところがこの京成杯AHでトロワゼトワルが記録したレコードタイムは、自身が逃げて、そのまま押し切ってのモノ。これでは差し馬勢は手も足も出ない。
この日は阪神競馬場も中山競馬場も春以来、久しぶりの開催という事で馬場状態は絶好。それに助けられてマークされたレコードタイムである事は疑いようがないが、逃げ切ってこの時計となると、こういう馬場適性を読み切った鞍上の好判断というか好騎乗というか、いずれにしろ馬だけでなく、騎手の腕も大きくモノをいった一戦だったと言えるだろう。
では、その鞍上は、というと、たびたびアッと言わせる騎乗ぶりで知られる横山典弘騎手(51歳)であった。