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F・トーレスが語った監督の重要性。
学びのアラゴネス、飛躍のベニテス。
posted2019/09/03 11:50
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Hirofumi Kamaya
8月23日に現役を退いたフェルナンド・トーレスは、今後サガン鳥栖のアドバイザーを務めつつ、しばらく家族とのんびり過ごすという。11歳でアトレティコ・マドリーのカンテラに入団して以来、練習と試合で酷使してきた心身を骨休めさせるのだろう。
しかし気になるのは「しばらく」の後。
誰もが予想し、期待しているのは監督ライセンス取得だ。
トーレス自身、6月下旬の引退発表会見前、スペインの『AS』紙の取材を受けて次のように語っている。
「以前は想像もしなかったけれど、ここ数年、監督になることを考えるようになった」
その理由がまたトーレスらしい。
幾人もの優れた監督に指導されてきた自分は、彼らからいかに多くを学んだか――。
おかげで自分の中に何が築かれたのか――。
監督は重要だが、前提は選手の学ぶ気持ち。
体力が落ち、経験を活かしてプレーするようになってそれらに気づいたからだという。発売中のNumber985号に掲載されているインタビューを行った際、プロ選手のキャリアにおける監督の重要性をトーレスに尋ねてみた。
返ってきた答えは「とても重要」だったが、一呼吸おいた後、彼は続けた。
「でも、まず前提として、選手に学びたいという気持ちがなくちゃいけない。それがなければ始まらない。監督に教わることはたくさんあるからだ。サッカーの技術や戦術はもちろんのこと、選手としての心構えも教えてもらえる。メンタリティは特に大事だ」
2001年5月にアトレティコのトップチームでデビューしたトーレスが、18年に及ぶ現役生活で指示を仰いだ監督はクラブだけでも計19人。その全員から様々な糧を得てきたけれど、自分のキャリアに最も大きな影響を与えたのは誰なのか明確に理解している。
「'01-'02シーズン、17歳の僕は当時2部のアトレティコでトップチームに正式に登録された。監督のルイス・アラゴネスからはいろいろなことを学んだ。辛い思いもさせられたよ。試合に出してもらえなかったり、独りで練習させられたり。あのシーズンと次のシーズン、ルイス・アラゴネスの下で僕の精神的な土台は作られた」