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八村塁の強気のメンタリティーこそ、
“挑戦者”日本バスケのラストピース。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/08/31 09:00
ドイツ戦では両軍最多の31得点をあげた八村。NBAサンダーでプレーする独PGのシュレーダーは「日本は手強かった」とコメント。
謙虚さと少しの“自信”。
渡邊が日本人で田臥勇太以来となるNBAのコートに立った。八村が、日本人として初めてドラフト1巡目で指名された。そして、中国W杯と来年の東京オリンピックの出場権を手にした。
そんな出来事があった、2018-19シーズンのしめくくりとなる中国W杯を前に、日本を万能感が包んでいたことは否めない。
自分たちは強いという幻想に溺れるのではなく、地に足をつけて弱者として勝つために何をすればいいのか、何をすべきかをチームが理解していることは小さくない意味があるはずだ。その認識は、地味なディフェンスに汗を流すときの、劣勢に立たされて踏ん張る際の、原動力となる。
そして、そんな地に足のついた認識があるからこそ、少しだけ顔をのぞかせる“強気なメンタリティー”が最高のスパイスになる。
強気なスタンスを崩さない八村。
格上ドイツを破ったあと、多くの選手が過信するのを避けるように、反省点や課題を口にしていた。その一方で、あの試合でチームトップとなる31得点を記録したうえで、こんな話をした選手がいる。
「『ドイツはどこまで本気を出していたのか?』とか言われますけど、僕らが100%の力を出せたかと言われたら、そうではないと思いますし。そういうなかでも勝ちは勝ちです。ドイツは『日本なんかに負けたくない』という気持ちでいたはず。そこで僕らが勝ったのは大きいですし、それを僕らはしっかり自信につなげたいと思います」
ドイツ戦ではチームトップの得点に加えて、最終盤に相手のエースでありNBAプレイヤーのデニス・シュレーダーのレイアップをブロックするなど、すでに攻守の要となっている八村。彼は、日本の立場を理解したうえで、強気なスタンスを崩さない。そのスタンスは、格上のチーム相手に日本が一泡吹かせるための最後の1ピースになるかもしれない。
謙虚でありながら、自信も持ち合わせるチーム。いよいよ始まるW杯を前に、対戦相手からすれば何とも厄介なチームに、日本がなりつつあることだけは確かである。