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西武ルーキーが“置きティー”で成長。
目標の中村剛也はまだ「雲の上」。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2019/08/23 07:00
西武・佐藤龍世は3月29日のソフトバンク戦でプロ初出場。8月10日のロッテ戦ではプロ初本塁打を放った。
「結果」を求めすぎ、フォームが狂った。
開幕一軍をつかんだものの、序盤は一軍でなかなか力を発揮できずにいた。
赤田コーチは続ける。
「キャンプ、オープン戦でできていたことが、開幕した直後はできなくなっていました。開幕直後は『結果を出したい』『ヒットを打ちたい』という気持ちが強く、どうしても体が前に突っ込むし、右肩が早く出てしまっていました」
ルーキーゆえの「結果を出したい」という思いがフォームを狂わせた。
「右肩が早く出るとスイングする軌道がブレて、変化球にバットが当たらなくなる。それを修正して、投手から捕手に到達する間の、長いポイントで打てるようにと練習しています。ピッチャー寄りの前のほうでも打てるし、差し込まれても強く振れるようになったと思いますよ」(赤田コーチ)
佐藤の成長は徐々に成績にも表れ、ヒットが生まれるようになった。
下半身を使って強いスイングを。
同時に、本人が課題として挙げているインパクトの強さについて、赤田コーチはこう説明する。
「腕っぷしが強いんですよ。でも、これまでは下半身が使えていなかった。もっと下半身を使えば、さらにスイングが強くなるし、スイングが強いということは、強い打球が打てる。そうするとヒットになる確率が高くなる。そこで、インパクトの瞬間に、いかに力が抜けないかを課題として練習に取り組ませています」
これまではスイングの始動から100%の力で振っていたため、インパクトの瞬間にその力は60%ほどまで減少していた。そこで「始動は30~40%でいいから、インパクトの瞬間に90%や100%の力が出るような打ち方を意識しよう」(赤田コーチ)と、専用の器具にボールを置いて打つ通称「置きティー」でスイングを繰り返している。
まずは止まっているボールを、自分のタイミングで、自分のポイントで打てる練習を続ける。「止まっているボールをイメージ通りに打てないと、動いているボールは一生打てない」というのが赤田コーチの理論だ。