Beyond The GameBACK NUMBER
1000勝監督原辰徳の大きな黒星。
~2003年、突然の辞任の3日前~
posted2019/08/21 16:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
扉を開けると男が座っていた。
ソファーに踏ん反り返るように腰掛け、両足はテーブルの上に無造作に投げ出されていた。男は部屋に入ってきた原辰徳を一瞥すると、冷めた目でこう聞いた。
「それで明日は誰でいくの?」
「予定通りに桑田でいきます」
原の答えにやや怒気を含んだ声が返ってくる。
「桑田で勝てるのかね」
原が巨人の監督に就任して2年目、2003年9月16日の夜のことだった。
この年のペナントレースは阪神が、2位に10ゲーム以上の大差をつけて独走態勢を固めていた。優勝が絶望となる中で、この日も敵地・名古屋の中日戦で2対19と大敗。9連敗で勝率5割を切った巨人は、Aクラス入りすら危ぶまれる状況となっていた。そうして試合後のホテルで繰り広げられたのが、翌日の先発を巡るこのやりとりだったわけである。