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日本中が注目する麹町中学の改革。
工藤校長が語る、教育の最上位目標。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/20 07:55
麹町中学で進める改革について工藤勇一校長は、「原則的にはどこでも適用できるはず」と語っている。
「武道の一斉履修はナンセンス」
工藤校長によれば、これまでの日本は「履修主義」に縛られていたという。全員が同じ単位を取得し、卒業していく。
「たとえば、私は武道が大好きですが、全員が体育で武道を一斉に履修するとか、ナンセンスですよ」
これからの時代は、「習得主義」への移行が日本の教育にとって大切だという。
「教育の最上位概念はなにかと考えていけば、生徒たちが将来、よりよく生きていくことが大切なわけです。学校での時間はそのための準備期間です。それを実現させるためには、個別に最適化した教育が必要になってくるのは明らかでしょう」
先生が教えずに、苦手教科を克服する。
麹町中での、数学が苦手な生徒に対するアプローチが興味深い。教員はほとんど教えず、あくまで補助者、支援者で、生徒が主体的にタブレット教材の「Qubena」で問題を解いていく。
苦手な生徒に、先生が教えない?
「その通りです。教材の問題を解いていくと、AIがその生徒の苦手な部分を判断し、弱点分野を克服する課題を出すんです。Qubenaでは小学校1年生の算数に戻って復習することも可能ですから、どのステージからでも復習が出来ますね。それを繰り返していくと成績の改善が見られ、最終的には教員が教えるクラスにまで上がってきます」
また、麹町中では全員に配布する問題集の購入もやめた。驚いたのは、塾の問題集を学校に持ち込んでもOKなことだ。
「リセット期間を終えた生徒たちは、学校でのあらゆる課題に対して、当事者意識を持ってあらゆる問題に取り組むようになります。学習面でも自分で課題を見つけられるようになります」