スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
日本中が注目する麹町中学の改革。
工藤校長が語る、教育の最上位目標。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/20 07:55
麹町中学で進める改革について工藤勇一校長は、「原則的にはどこでも適用できるはず」と語っている。
「どうして鉄棒やマット運動はあるの?」
そうした環境で工藤校長の改革は2014年にスタートした。
「最初の1年目のカリキュラムは、前任者が決めたものでした。その中で教職員に課題を挙げてもらうと、340項目にものぼりました。そこから改革をスタートさせたんです」
課題解決のために工藤校長が重視したのは、
「みんなが合意できる『最上位概念』、『上位目標』を決めよう」
ということだった。
「ここでは、体育を例に考えてみます。私は体育の教員に『どうして体育で鉄棒やマット運動があるの?』と質問したことがあります。先生でも納得できる答えを持っている人は少ないですよ。
それなら、スポーツの最上位概念は何か? というところに立ち返ると、障害があってもなくても、運動が上手でも下手でも、スポーツをする楽しさを実感することに収斂していくんです。
鉄棒を無理矢理やらされて、体育、そしてスポーツが嫌いになってしまっては元も子もありません。日本の教育の問題は、鉄棒をやらせるという手段が目的化していることなんです」
宿題は、手段が目的化した象徴。
学習面では、平成30年度(2018年度)から定期テストと宿題を全廃し、理解を確認するための単元テストと、実力テストだけが行われるようになった。宿題の無意味さを、工藤校長はこう話す。
「宿題は生徒にとってやらされるものです。押しつけて身につくものはほとんどありません。教員にとってみれば、評価をつけるために材料として使っている面がありますから、宿題は“大人が作り出した問題”なんです。宿題という手段が目的化してしまい、いろいろな問題を引き起こしてしまったわけです」