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留学生のいない名門公立バスケ部、
広島皆実と能代工が練った作戦とは?
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph byMiho Aoki
posted2019/08/08 17:30
報徳学園のコンゴロー・デイビッドとマッチアップした広島皆実の三谷桂司朗。留学生チームとのマッチアップで得るものは大きい。
「我々の頃ってずるかったんです」
「今の選手たちは成功体験が少ないんですが、そういうときこそ図太さが必要だと思うんです。我々の頃の能代工ってけっこうずるかったんですよ。死んだふりをしてパッと手を出すような(笑)。そういうずるさというか、勝つために何が何でもやってやるというプレーが出てくると、もっと楽しくなると思うんですけどね」
2018年5月に行ったインタビューで、小野コーチは楽しそうに話していた。
コーチ就任から2年経ち、選手たちも戦い方やマインドをよく理解できるようになってきた。「勝ち進めば当然試合数は増えていきます。その中でも精度の高いバスケットを徹底することと、誰が出てもプレーの質が落ちない層の厚さが必要です」と、名将はウインターカップを見据えている。
「縦の力」の差を崩すために。
今回はベスト8まで勝ち上がれなかったものの、ウインターカップでの上位進出が期待できる“日本人チーム”は他にもある。
言わずと知れた八村塁の出身校で、現在も将来性豊かな選手を抱える明成(宮城)は、インタ―ハイ優勝1回に対しウインターカップ優勝5回と、冬にめっぽう強い。今大会は不出場だったが、U16、U18の主力が多く所属する福岡大学附属大濠(福岡)や洛南(京都)も、ウインターカップでは出場する算段が高い。
2017年のインターハイで優勝し、昨年は「日本で一番、福岡第一と競ったチーム」と注目された福岡大大濠は、片峯聡太コーチ自身が同校の選手時代に留学生たちと対戦している。
「当時も私がコーチに就任したころも『とにかく走ればなんとかなる』という考え方でしたが、今は緩急をつけた戦い方で、我々が常にゲームのイニシアチブを握ることを意識しています」
こう明かしてくれた。
冒頭でも触れたように、ゴールが頭の上にある以上、留学生たちが持つ「縦の力」は圧倒的に有利で、日本人チームにはどうしたって分が悪い。高く強固な牙城をかいくぐり、よじ登り、頂点に近い場所に進むために生み出すプロセスを、今後も興味深く見つめていきたい。