バスケットボールPRESSBACK NUMBER
留学生のいない名門公立バスケ部、
広島皆実と能代工が練った作戦とは?
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph byMiho Aoki
posted2019/08/08 17:30
報徳学園のコンゴロー・デイビッドとマッチアップした広島皆実の三谷桂司朗。留学生チームとのマッチアップで得るものは大きい。
留学生チームに勝った能代工。
広島皆実が4回戦で初めて留学生チームと対戦したのに対し、能代工業は3回戦で留学生チームの高知中央(高知)に勝ってベスト8に進出している。
全国制覇を数えること実に58回。田臥勇太(宇都宮ブレックス)など多くの名選手を輩出してきた日本屈指の名門は、アフリカ人留学生が来日した2000年代半ばから徐々に全国上位で勝てなくなり、2016年には47年ぶりに全国大会を逃す憂き目にあった。
そうした状況を打開するため、2018年度からはOBで、トヨタ自動車(現アルバルク東京)、日立(現サンロッカーズ渋谷)などで采配をふるった小野秀二がコーチに就任。かつてと比べれば集まる選手のレベルは超一流とは言えないが、それでも昨年は3大会連続でベスト16以上に進出するなど、さっそく力をつけている。
去年よりももう1つ高いところへ行こう。
この目標を達成し、さらに上位進出を目指して昨年のインターハイ王者の開志国際に挑んだが、58-83と大敗した。主将の須藤陸は「ベスト8に進めたのは自信になったけれど、留学生のフィジカルの強さでチーム全体が疲弊した。たとえ留学生チームと連戦しても、強度の高いプレーができないと今日のような試合になってしまうと実感しました」と話した。
チーム伝統の「平面バスケ」で戦う。
小野コーチが目指すスタイルは、激しい運動量とスピードで相手を惑わす能代工業伝統の「平面バスケ」がべース。さらに、5人全員がよく動いてノーマークを作り出し、留学生の影響を受けにくい3ポイントシュートで得点を奪う要素も付け加えた。
今でこそ全国各地から選手が集う環境にあるが、能代工業はもともと「田舎町の小さく普通の選手が、都会の大きく非凡な選手たちにいかに勝つか」という発想から強くなったチームである。
その黎明期の“匂い”を知る小野コーチだからこそ、高さと能力に優れた留学生が台頭する現在の状況に、当時を重ねる部分があるのかもしれない。