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留学生のいない名門公立バスケ部、
広島皆実と能代工が練った作戦とは?
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph byMiho Aoki
posted2019/08/08 17:30
報徳学園のコンゴロー・デイビッドとマッチアップした広島皆実の三谷桂司朗。留学生チームとのマッチアップで得るものは大きい。
広島皆実は長身の選手たちを起用。
広島皆実は2年前のインターハイ、深渡瀬海(現・大東文化大2年)と三谷桂司朗(現・広島皆実高3年)という2人の190cmオーバーを起点に、藤井貴康コーチ就任以来初のベスト8に進出。3回戦で留学生チームを打ち破り、4回戦で福岡第一と接戦を演じたこの大会を受けて上位を目指すマインドが根付いたが、ベスト4の壁は厚かった。
190cm前後の選手を同時起用し、1人が留学生を止め、1人がそのスキを突く。留学生チームとやり合う生命線をこのようにとらえている藤井コーチは、今年の大会でベスト4入りをかけて戦った報徳学園戦でも、191cmの三谷と187cmの大福谷をスタメンに起用した。
オールラウンダーの三谷はアウトサイドにポジショニングし、大福谷をゴール下に飛び込ませて得点を奪うというスタイルを想定していた。
しかし「県内にも留学生はいるけれど、全国ベスト4に入るような選手のプレーはまったく違っていた」と大福谷が委縮し、そのシュートを決められず。第1ピリオドから7-21と大差がつき、その後も修正できず61-96で敗れた。
“見えない壁”と公立校の予算。
留学生の桁違いの高さとパワーに慣れ、苦手意識をなくすことは、それを打ち破ろうとする日本人チームにとって必要不可欠なことだ。
エースの三谷も「レイアップに行くときに彼らがゴール下にいたら迷ってしまうし、アウトサイドシュートを打つときも『外したら彼らにリバウンドをとられて逆速攻される』と考えて、思い切ったシュートが打てない。難しいところです」と、留学生チームの“見えない壁”を語った。
新チームの始動から今大会までの約7カ月間で、広島皆実が留学生チームと戦ったのは6回ほど。
「日常的に彼らと戦わないことには、心理的な要素で判断を誤ったり、シュートを打ちきれなかったりすることが続いてしまいます」
藤井コーチは“慣れ”の大切さを痛感しているが、限られた予算で活動する公立高校として、どのようにしてその経験を培っていくのか。指揮官の手腕に期待がかかる。