話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「バルサ化」の夢はいずこへ……。
新監督でも止まらない神戸の混迷。
posted2019/07/18 11:40
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
ヴィッセル神戸は、どこに向かおうとしているのだろうか。
昨年、チームの「バルサ化」を謳い、アンドレス・イニエスタを獲得すると今シーズンはフアン・マヌエル・リージョを監督に招聘し、ダビド・ビジャ、セルジ・サンペールを獲得した。システムを4-2-3-1に固定し、時間をかけてバルサイズムを浸透させていくのかなと思いきやわずか7試合でリージョ監督はチームを去った。
次の指揮官は、困った時の吉田孝行だった。
守備が破綻しているのを修正すべく3-4-2-1のシステムにガラリと変えた。やや後ろに比重を置いた戦い方だが、それでも最終ラインを含めた守備が持ちこたえられず、リージョ監督時代の2連敗を含めて7連敗を喫し、15位に落ちるなどドン底状態に陥った。結局、1勝1分5敗で吉田政権は終わった。
そして、新しい指揮官に指名されたのが、現監督のトルステン・フィンクである。
堅守スタイルがフィンクのベース。
2007年にレッドブル・ザルツブルクのトップコーチとなり、ジョバンニ・トラパットー二監督の薫陶を受けた。当時のザルツブルクはわりと守備を重視したチームで、トラパットーニのイタリアの伝統的な堅守スタイルがフィンクのベースとなった。その後はその上で相手を分析し、効果的な攻撃を仕掛けるリアリスティックな戦い方を指向してきた。
実際、神戸を指揮するや否や、4-4-2のオーソドックスなシステムを採用し、両サイドハーフには小川慶次郎、古橋亨梧ら動ける選手を置き、攻守にハードワークを求めた。ボランチにポジションを下げたイニエスタの自由を確保するなど、チームがより機能するように修正した。
初陣となるFC東京戦は1-0で粘り勝った。
堅守をベースにしつつ、相手を入念に分析し、相手の強みをうまく利用して攻撃を仕掛けるフィンクの手堅い戦い方が見えた。「バルサ化」の象徴たるポゼッションが最優先されることはなかった。