話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「バルサ化」の夢はいずこへ……。
新監督でも止まらない神戸の混迷。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/07/18 11:40
現役時代はバイエルンの守備的MFとして輝かしい実績を残したフィンク監督だが……。
ポゼッションを放棄しているように見えた。
その戦い方は、7月14日の湘南戦も同じだった。
試合前、フィンクが選手に指示したのは、「相手が前に出てきたらボールを奪ってDFの裏をつくロングボールで攻めろ」である。この指示通りに動いた結果、前半20分、先制ゴールが生まれた。イニエスタが50mものロングパスを裏に走っていた古橋亨梧にピタリと合わせ、そのまま古橋が蹴り込んだ。
ここまでは湘南のサッカーを分析した成果が出た。
だが、その後も監督の指示通り、自陣に誘い、ロングボールとカウンターで攻めるだけ。GKからセンターバックにボールをつなぎ、山口蛍やイニエスタに入れてからボールを回し、攻めるシーンはほぼなかった。まるでポゼッションを放棄しているように見えた。
「バルサ化」は終わったのか。ピッチを見ていた誰もがそう思ったことだろう。
苦し紛れに蹴ってロストしてしまう。
試合後の山口はこの現状について、何ともいえない複雑な表情をしていた。
「つなぐことと(ロングボールで)ウェリ(ウェリントン)を使うことをうまく使い分けながらやっていかないといけないけど、後半はウェリに偏り過ぎた。GKからウェリに蹴る回数が多かった。それではリズムが出づらいんで、もう少し後ろからしっかりつないでいければよかったかなと思います」
GKからウェリントンに向けて蹴り、競ったボールをダビド・ビジャが拾ってゴールに向かう。それが狙いのひとつだったが、湘南はそれを読んでいた。それでもその攻撃をつづけたのは、最終ラインからのビルドアップがうまくできていないからだ。最終ラインでボールを回しても相手にプレッシャーを掛けられると苦し紛れに蹴ってロストしてしまう。それではポゼッションなどできるはずがない。