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村田諒太は自分も思考も変えられる。
「苛立ちはない、虚勢も張らない」
posted2019/07/12 08:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
染みついた習慣を変えたいと思っても、簡単に変えられるものではない。
だが村田諒太は、変えられる人だ。
他人任せにせず自分で考えて発想を転換させるから、それを可能とする。
王者と挑戦者の立場が入れ替わったロブ・ブラント(アメリカ)とのリマッチ(7月12日、エディオンアリーナ大阪)。試合2日前、大阪市内のホテルで行われた調印式において村田はこう言い切った。
「今までやってきたことを出すだけです。いいトレーニングができたので、それをリング上でしっかり出す」
前回、ラスベガスで0-3完敗に終わったブラントへのリベンジを果たすためにどんな「いいトレーニング」を積んできたのか――。
相手ではなく、自分をコントロールする。
ブラントの圧倒的な手数とスピードに翻ろうされ、何も出来なかった。相手の作戦勝ちと言ってしまえばそれまで。村田は相手よりも自分の問題と捉えた。
彼はこう語っていた。
「相手が崩れることはコントロールできない。でも自分が崩れないことはコントロールできる。振り返ってみれば、練習の段階から僕は自分を崩していたということ。先に崩れたほうが負けるんだと、あらためて理解できた気がしました」
トレーニングで崩れなければ、試合でも崩れない。
ブラントとのリマッチの方向性が出ると、崩れないためにまず自分の戦いを修正していくことになった。彼が自分で気にくわなかったのは「棒立ちになってしまったこと」だった。
3日の公開練習時にもこの点を挙げている。
「棒立ち状態で前に行って、相手のパンチをボカボカともらって、たまに出してくるワンツースリーの3つめで顔をはね上げられた。その印象度で(採点を)全部持っていかれたと思うんで、1つは棒立ちにならないようにしっかり足腰に力がある状態でプレッシャーかけて、上下をしっかり打って、まあそこがキーになるかなと思います」
日々のトレーニングのミット打ちでは左ジャブ、手数やコンビネーションを意識するようにバランスの保たれた重心から回転のいいパンチを放っていた。ひざを柔らかく、頭を動かし、体を振る。四方にロープを張り、ダッキングやウィービングからパンチを振るトレーニングは前回までにはなかったものだ。