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プロ野球「中学生ドラフト」のメリット。
鈴木スポーツ庁長官の提言から考える。
posted2019/07/15 12:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
6月25日から日刊スポーツに掲載された鈴木大地スポーツ庁長官の「高校野球改革案」のインタビュー連載は、日本の野球界が変わっていくきっかけとなるものだった。
計3回の連載で鈴木長官は「プロ野球球団によるユースチーム創設」「勝利至上主義からの脱却」「春のセンバツ高校野球の都市対抗方式採用」「指導者のライセンス制導入」や「プロアマ全ての野球統括組織の創設」など、8つの提言をしている。
いずれも唯一無二と信じられてきている「高校野球」という“絶対価値”に風穴を開けるものだ。その上で野球をやる子供たちの選択肢を増やし、彼らの健康を守りながらスポーツを推進するという至極、当たり前のことを目的とした提案だった。
だが、これがなかなかうまく進まないのが「国民的行事」とも呼べる甲子園大会を頂点とした高校野球の難しさなのである。
実はちょっと前に、ある球団関係者と中学生のドラフト指名について話をしたことがある。
きっかけは大阪・河南シニアでプレーし、シニア・リーグの日本代表にも選出された結城海斗投手が、昨春の中学校卒業後に大リーグ、カンザスシティ・ロイヤルズとマイナー契約を結んだことだった。
「甲子園よりアメリカで野球を」
「初めは甲子園を目指していたんですけど、甲子園よりアメリカで野球をやりたいという思いが強くなった」
結城投手の思いだった。
これまでも花巻東高校の菊池雄星投手や大谷翔平投手らのように、高校卒業後に日本のプロ野球を経ずに直接、アメリカでのプレーを夢見た選手は何人かいた。ただ彼らの頭にはまだ、高校野球の“絶対価値”があった訳だが、結城投手にはもはやその価値よりもアメリカでプレーするという方が魅力的なものとなっていた訳である。
ならば日本のプロ野球も、それぐらいの魅力を作り出さなければならないのではないか――。
結城投手が示した事実は、これからは素質の高い中学生が直接、メジャーに流れていく時代がやってくるかもしれないということだからだ。
「そのためには日本のプロ球団も中学生をドラフト指名して、早い段階から素質を伸ばすために野球ができる環境を作るべきだ」
こんな話になったのだ。