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プロ野球「中学生ドラフト」のメリット。
鈴木スポーツ庁長官の提言から考える。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2019/07/15 12:00

プロ野球「中学生ドラフト」のメリット。鈴木スポーツ庁長官の提言から考える。<Number Web> photograph by Kyodo News

スポーツを通じて、子どもたちの未来を常に考えている鈴木大地長官。自身の経験を生かした「アスリート・ファースト」の思考ができる貴重な政治家。

現行ルールでも中学生がプロ入りすることは可能。

 中学生をドラフト指名することは現行のルール上は可能である。

 指名したら、チームの寮に入れて地元の高校に通わせて勉強もしっかりさせる。学校から戻ったら、三軍で練習をしながら体力作りや技術習得も行なっていく。技量を見定めながら週末には試合に出場させることも可能になる。

 何より一番のメリットは、甲子園で勝つことが絶対的な目的ではなくなることだ。だから長期的なスパンで投手の球数を管理し、体力的にムリな練習や試合出場をさせずに、健康管理をしっかりしながら才能を伸ばす機会を作れる。

 甲子園で勝つためにムリしがちな才能を、きちっと伸ばしきる可能性が生まれるのではないかということだ。

ドミニカの「野球アカデミー」のケース。

 実はメジャーの30球団がドミニカ共和国で運営する「野球アカデミー」も同じことだ。

 15歳前後になった子供たちが所属して、そこで徹底した球数の管理や指導によって才能を伸ばすことに特化する。その結果、ドミニカ共和国の人口は1千万人強ながら、2019年は102人の選手がメジャーリーグの開幕ロースター入りしている。国別のメジャーリーガーの人数では631人の地元アメリカ出身者に次ぐ2位で、総人口に対する割合としてはアメリカを凌ぐものである。才能の伸び率が非常に高く、背景にアカデミーの存在があることは明らかだ。

 もちろんドミニカとは社会環境も教育環境も違う日本で、全く同じアカデミーを設立することは難しいかもしれない。

 それでもプロ野球の球団がチーム内に同じような育成システムを作り、中学校卒業時に指名して育成することはできるはずで、そういう選択肢があってもいいのではないかという、球団関係者との論議だった。

 結局、鈴木長官が挙げた「ユースチーム」の創設とほぼ同じ内容だったのだ。

【次ページ】 「甲子園を諦めてプロの三軍」という選択。

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