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J3クラブの主将が週2で営業マン。
グルージャ盛岡の“働き方改革”。
text by
菊池康平Kohei Kikuchi
photograph byKohei Kikuchi
posted2019/07/07 09:00
スーツに身を包む福田友也。ピッチではキャプテン、会社では営業マンの“二刀流”だ。
1日50~100件ほどテレアポする選手。
次に話を聞いたのは今季、横浜FCから加入した石井圭太だ。
石井は福田と同様、週2~3回、14時~18時で働いている。勤務先は保険代理業を主とする会社だ。保険の知識を得るのには膨大な時間がかかるため、まずは会社が展開している他事業のサポートをするべく、電話営業に従事している。いわゆるテレアポだ。
飲食店や病院などに架電し、アポが取れたら社員とともに訪問する。
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石井もアルバイトの経験がなかったため、仕事に就くのは今回が初めてだ。しかし何より驚いたのが、話を聞いた5カ月前に比べ、口調が素晴らしく丁寧になっていることだった。 テレアポは大変では?」と聞くと頼もしい答えが返ってきた。
「難しいしメンタル的にも厳しいと聞いていましたが、何も知らない分、新しい気持ちでできています。断られるのは当たり前と思って架電してますよ」
1日に50~100件ほど架電しても、1件のアポイントが取れたらいいほうだ。話の途中で切られたり、心ない“ガチャ切り”もある。そんな中、石井は初日から成果を挙げた。勤務先のブルーアドバイザーズ株式会社の小野寺数馬社長はその働きぶりに驚いている1人だ。
「初日から4件、アポをとったんですよ。正直、即戦力としては期待していなかったのですが驚きました。やり続ける力を持っています。一般の方ですと途中で心が折れて、架電することすらできなくなったりしますからね。これまでの約2週間で10件アポイントが取れて、2件成約したんですよ」
「24歳で仕事を経験できて良かった」
粘り強くサッカーに取り組み、Jリーガーにまでなった石井の強みが自然と発揮されたのだろう。アポが取れて実際に訪問すると、こんなこともあるという。
「グルージャのエンブレムと背番号入りの名刺を作ってもらったんです。それを武器に自分のことを説明すると、話が盛り上がることはありますね。
ただ、『お世話になっております』や『いらっしゃいますでしょうか?』などの言葉はこれまで使ってきていなかった。なのでそれを会社の方に教えてもらいました。言葉遣いを覚えられましたし、電話から始められて良かったです。アポイントが取れるように、試行錯誤しながら説明の仕方など変えていますよ」
挑戦してダメなら、話し方を変えてみる。トライ&エラーを繰り返すのはサッカーと一緒だ。電話営業で培った話し方。それは例えば試合後のヒーローインタビューなどでも活きることだってありうる。
「この歳(24歳)で仕事をする経験ができて本当に良かったです。これを30代で初めて経験するのでは全く違うのかなと感じています」(石井)