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J3クラブの主将が週2で営業マン。
グルージャ盛岡の“働き方改革”。
text by
菊池康平Kohei Kikuchi
photograph byKohei Kikuchi
posted2019/07/07 09:00
スーツに身を包む福田友也。ピッチではキャプテン、会社では営業マンの“二刀流”だ。
仕事がマイナスには全然ならない。
この仕事を通し、キックのスキルも上がっている感覚もあるという。
「練習の目的に沿って、わざとキャッチさせるボールを蹴ったり、厳しいボールでしっかりGKを飛ばせたりなど、意図的に蹴り分けるんですよ」
自然と自らの練習にもなるのだ。ただ、コーチとしての勤務は一定の時間を拘束されるということでもある。そこでの疲労は残らないのだろうか。
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「疲れをあまり感じるタイプではないので、休むのはあまり好きじゃないんです。体を動かすことが好きなので、この仕事をしていなくても、午後にジムに行ったりしているタイプなので。仕事を始めてマイナスになっていることはひとつもないですよ。筋トレするにしても時間は自分で作るものですよね」
現役選手が指導してくれることは、子供たちにとってプロのレベルが体感できる素晴らしい機会となる。今まではグルージャでの人間関係のみだった射庭のコミュニティも広がっている。
「ひとつのチームにいながら、他のチームにも関わらせてもらってる形なので、関わる人や視野が広がりました。山形の時はプロ1年目で、1年契約でしたので勝手にプレッシャーを感じて、やらないといけないと思って、今考えると力が入り過ぎていたのかもしれません」
100%打ち込みたい、という思いも。
午前のチーム練習後にはジムに行くという、まさにサッカー漬けの毎日を送っていた。チーム内だけの人間関係だけではなく、彼自身に少しの遊びが必要だったのかもしれない。
選手としての今を頑張ることが大前提だが、必ずや来るセカンドキャリアのプランを聞いた。
「サッカーに関わりたいというのが大前提です。チームのマネジメントなどをJのチームに入ってやってみたいです。選手としてこれから良い経験を重ねていけたら指導者もやるべきなのかなとも思っています」
前述した福田や石井はサッカーとは全く違う世界での仕事に取り組んでいる。一方で射庭はサッカー関連の仕事に携わることを一貫している。選手のやりたいこともそれぞれで興味深い。
最後に射庭はこんな言葉を残した。
「仕事を頂いて新しい経験をさせてもらっているという部分の反面、選手としてサッカーに100%打ち込みたいという気持ちも正直あります。そういった全部を含めて、いい経験をさせてもらっているのかなと思っています」
働きながらプレーするJリーガーの本音――。それが分かることこそ、グルージャの試みの大きな意義なのかもしれない。
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