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本拠地をフロリダとカナダで分割?
レイズの仰天案が意外とアリな理由。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/07/03 11:40
動員に苦しむタンパベイ・レイズ。モントリオールとの“ダブル本拠地”案は本当に実現するのか。
宮城と東京圏を本拠地にしたロッテ。
仙台の宮城球場(現楽天生命パーク宮城)は、東北楽天ゴールデンイーグルスが通年本拠地とするはるか前、ロッテの本拠地として使われたことがある。
それは1973年から1977年までの5年間(最初の1年は「準本拠地」)のことで、それまでの本拠地である東京スタジアム(荒川区南千住に内外野天然芝のボールパークがあったそうだ!)が1972年限りで閉鎖されたためだった。
ただし、宮城球場の他にも、巨人の本拠地である後楽園球場、ヤクルトの本拠地である神宮球場、当時は大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)の本拠地だった川崎球場といった東京圏の球場もホーム試合のために使用していた(それは「準本拠地」から「本拠地」となっても変わらなかった)。
試合数は宮城球場で26~38試合、首都圏での試合が27~35試合だったというから、実質的には2都市に本拠地を分割していたと言っていいだろう。
当初から「首都圏に新本拠地を置くまでの暫定的な処置」としての「宮城移転」だったというから、1978年から大洋の横浜スタジアムへの移転を契機に空き家になった川崎球場を新本拠地としたのも自然な流れのように思えるが、地元・宮城の人々の心情は複雑だったそうだ。
どう混乱を最小限に抑えるか。
では、タンパベイとモントリオールの本拠地分割案が実行されたら、どうなるのか?
実質上、ロッテが宮城県と首都圏に本拠地を分割していた時に似た軋轢のようななものは、きっと起きると思う。
たとえ建設資金が大幅に削減できたとしても、それを地元民の税金で賄おうとするならば、間違いなく反対運動は起きるし、それを押し切って「本拠地分割案」が成立したとしても、地元の人々の中にある種の「しこり」は残るだろう。
だから、メジャーリーグは様々な混乱を想定して、それを最小限に抑えるべく、用意周到に新チームを導いていくことになる。
メジャーリーグはビジネス上手であり、かつてモントリオールからワシントンD.C.への「本拠地移転」を成功させた時のように、単独球団や単独リーグのためではなく、米球界全体の繁栄を考えているからだ。