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<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.6>
個性豊かな柔道家の挑戦。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/08/01 11:00
左から、男子100kg級・ウルフアロン(了徳寺大学職)、女子78kg超級・朝比奈沙羅(パーク24)、女子78kg級・濵田尚里(自衛隊体育学校)、女子52kg級・志々目愛(了徳寺大学職)。
海外勢相手に57連勝した志々目愛。
「外国人選手はすごくパワーがあるというイメージがあって、組み手のうまさよりもパワー。自分が組むことさえできれば、パワー負けせずに投げられる。先に組むことを考えてやっています」
柔道とJUDOが異なる進化を辿った現在、それぞれに対する得手不得手というのも生じるようになった。国内では強くても海外勢には分が悪かったり、逆のパターンもしかり。それだけに海外勢との相性、JUDOに対抗する力というのも1つの重要な個性である。
女子52kg級の志々目愛は海外勢に対して絶対的な強さを誇ってきた。2015年のグランドスラム・パリ準々決勝でコソボの選手に敗れて以降、海外勢には約3年半負け知らず。調整のために出場した今年5月の大会で試合中に右足を痛めて途中棄権し、記録こそ途絶えたものの、積み上げた連勝は57まで達した。
阿部詩、角田夏実というライバル。
となれば、あとは国内の争いである。「勢いが本当にすごくて、投げ力もある」と立ち技に強い阿部詩、一方で寝技に長けた角田夏実。志々目が近年黒星を喫しているのは、タイプの異なるライバル二人だけである。
世界柔道の決勝は2年連続で日本人対決となり、志々目は一昨年は角田を破って、昨年は阿部に敗れた。今年の最終選考会となった4月の全日本選抜体重別選手権は、阿部が欠場し、志々目は決勝で角田に敗れた。それでも海外勢への強さなど実績を評価されて2枠目に滑り込んだ。
「国内でこれだけ強い選手がいるから自分を高めることができるし、ライバルがいるというのはすごくいいことだと思う。自分の中では組んだら投げられる自信はある。その形にどう持っていくかが課題」
特に今回ともに代表に選ばれた阿部に対しては1勝5敗と大きく負け越しており、2年以上勝てていない。三たび日本人対決はあるのか。そして阿部越えは果たせるのか。畳に上がる前に、まずは右足のケガも乗り越えなければならない。
「選抜で(角田さんに)負けてちょっと厳しいかなという思いはあったので今回選んでもらってほっとしている部分はある。せっかくのチャンスをしっかりモノにできるように頑張りたい。一つ一つ勝っていくことでしか日本人対決というのはできない。今回は自国開催なのでしっかりと優勝したい」
JUDOの頂点、そして柔道でも頂点を極めることが志々目の宿願である。