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<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.4>
未来を背負う気鋭たち。 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/07/18 11:00

<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.4>未来を背負う気鋭たち。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

左から、女子57kg級・芳田司(コマツ)、女子48kg級・渡名喜風南(パーク24)、男子81kg級・藤原崇太郎(日本体育大学3年)、男子90kg級・向翔一郎(ALSOK)。

ライバルに一歩ずつ近づく渡名喜風南。

 芳田と同じ1995年生まれ、同じ相武館吉田道場で柔道を学び、「階級は違うけど、ライバルという感じで負けたくない気持ちはある。いい刺激になっている」と対抗心を見せるのが女子48kg級代表の渡名喜風南である。

 2016年のリオ五輪で銅メダルを獲得した近藤亜美も同い年で、ジュニア時代から追い続けてきた存在だった。しかし当時は「自分はまだその域に達していないと思っていた。追いつくというよりはコツコツと、まずスタートラインに立てればいいと思っていた」と大きな差をつけられても悔しさを覚えることはなかったという。

「それが少しずつ勝てるようになってきたのは、相手もそうだし、自分のことも客観的に見られるようになったから。投げる力が劣っているなとかその時々の課題を見つけて考えられるようになった」

 10代で世界女王に上り詰めた近藤に比べれば亀の歩みかもしれない。それでも初出場した2017年の世界柔道で金メダル、昨年も銀メダルを獲得。2017年は近藤との2人代表だったが、今回は渡名喜だけの選出となり東京五輪に向けて一歩リードした格好となった。

刺激を受けたウクライナの新星。

 今年に入って渡名喜は“肉食系”への転身を図った。「自分で何か変えたいという気持ちがあって挑戦したいなと思った」と1月にモンゴルで単身短期合宿を敢行。同地を選んだ理由の1つである同じ階級のライバル、ムンフバット・ウランツェツェグとも交流を深めた。

「彼女が言うには、やっぱりお肉を食べないと強くなれないというので頑張って食べました。日本に帰ってからも、いまは週3回ぐらいは食べるようにしています。それまではほとんど食べなかったし、食べても鶏肉だった。好きじゃなかった牛肉も好きになりました」

 日本女子の看板階級を背負う選手となってもなお自己変革の必要性を感じるのは、同期からの刺激以外に、年下の強力なライバルの出現も大きい。

 昨年の世界柔道決勝では当時17歳のダリア・ビロディド(ウクライナ)に一本負けを喫した。田村(現・谷)亮子を抜いて女子48kg級の史上最年少優勝記録を樹立した新星であり、その美貌は日本でも話題となった。

 この階級では類を見ない172cmの長身の持ち主だけに、148cmの渡名喜はどうしても攻めあぐねて3戦3敗と苦手にしている。

「規格外の大きさですし、いつも予想のつかない展開になっている。彼女のキーポイントは引き手なんですけど、自分が結構簡単に持たせてしまっていた。次は簡単に持たせずにどう攻めていくかを考えている」

 4月の全日本選抜体重別は左膝のケガで欠場したものの、ビロディドとの再戦をイメージしながら準備に抜かりはない。

【次ページ】 藤原崇太郎の“悪役”仕込みの裏投げ。

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芳田司
渡名喜風南
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