ル・マン24時間PRESSBACK NUMBER
ブエミが語るアロンソの速さ(後編)。
「高性能のコンピュータのような走り」
posted2019/07/01 11:35
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
TOYOTA
世界三大レースの1つであるル・マン24時間レースを連覇し、WEC(FIA世界耐久選手権)のタイトルも独占。TOYOTA GAZOO Racingの強さは、まさに驚異的だった。その一翼を担ったのがF1の元チャンピオンドライバー、フェルナンド・アロンソである。
共にTS050 HYBRIDを駆ったチームメイトのセバスチャン・ブエミが語るアロンソ論。
後編では、アロンソが持つ類まれなレース巧者としての才能、そして「トリプル・クラウン(ル・マン24時間耐久、モナコGP、インディ500の完全制覇)」を目指す理由を分析してもらった。
瞬間的な判断の速さ、うまさ。
――すさまじい闘争本能とディテールのこだわり、そして柔軟に新しい物事を吸収していく対応力、ここまでアロンソの特長がいくつか挙がったわけですが、ドライビングの面で、それ以外に印象に残った部分はありましたか?
「感心したのは、周回遅れのマシンを抜いていくうまさだったね。
たとえばコース上のかなり前の方に、カテゴリーが下のGTEクラスのマシンが走っていたとする。スピードはこっちのTS050 HYBRIDのほうが圧倒的に速いから、あっという間に追いつく形になるけど、実際のレースでは先行するマシンが視界に入ったあとの数秒間の展開を正確に予測して、仕掛けるかどうかを瞬間的に判断しなければならない」
――たしかにル・マンのようなレースの場合、上位カテゴリーと下位のカテゴリーのマシンでは、トップスピードだけをとっても50km/h近くの差があります。60台ものマシンが混走する形になるため、いかに遅いマシンを抜いていくかは勝負の大きな分かれ目になります。
「しかも距離が開いている場合には、判断が難しくなる。ブースト(ハイブリッドシステムから生まれる加速エネルギー)を使えばぎりぎり相手をかわせることもあるけれど、そうじゃない場合にはブーストの使用をキャンセルしなければならない」