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ブエミが語るアロンソの速さ(後編)。
「高性能のコンピュータのような走り」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTOYOTA
posted2019/07/01 11:35
中嶋一貴と共に、2018-'19シーズンで年間王者に輝いたアロンソ(右)とブエミ。
「彼の頭の中には高性能のコンピューターが」
――延々とストレートが続くわけでありませんからね。しかも1周で使える回生エネルギー量(8MJ)が決まっているので、効果的に使っていくことは、燃費やラップタイムを維持していく上でも重要になる。
「そう。フェルナンドはコース上が混み合った状況の中でも、こういう判断を下すのがとてもうまい。これは彼の予測能力がきわめて高いからなんだ」
――関連してですが、中嶋一貴選手は空間認知能力の高さを指摘した上で、それが夜間のドライビングの速さに繋がっているのだろうと語っていました。一般的にアロンソは、本能的な速さで勝負するドライバーだという印象が強かった。でも、そのような見方は、一面の真実しか突いていない。
「実際には、ものすごく考え抜かれた走りをするドライバーだよ。彼の頭の中には高性能のコンピューターが積まれていて、いろんな要素や情報を常に冷静に計算し続けているんだ(笑)」
メンタル面と分析能力、2つの組み合わせ。
――よくわかります。実際のレースでは、周回遅れのマシンを最適なタイミングで抜くことによって、ライバルのマシンに差をつける――自分が抜いた瞬間にトップ争いをするマシンの前方に、ペースが遅いマシンが割って入るような状況を作り出すことも必要になってきます。
そうやって考えてくると、フェルナンド・アロンソというドライバーに関しては2つの要素、あなたが最初に指摘したメンタル面の強さと、きわめて冷徹に状況を分析していく能力の組み合わせこそが、大きな特長なのかなという印象も受けますが。
「そう言えると思う。現に彼はレースの流れを読むのがとてもうまい。コース全体を俯瞰しながら個々のシチュエーションごとに、いろんなオプションを選択して、ラップタイムをあげるにはどうすればいいか、マシンを速く走らせ続けるには何が必要かを判断している」