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山中慎介とボクシング業界の危機感。
プロ選手は全盛期の半分まで激減。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2019/06/26 08:00

山中慎介とボクシング業界の危機感。プロ選手は全盛期の半分まで激減。<Number Web> photograph by AFLO

現役からは退いても、山中慎介のボクシングへの愛は変わっていない。危機感も大きいのだろう。

全盛期は『ガチンコ・ファイトクラブ』の頃。

 もう1つ、ボクシング人口の減少も今回のトーナメント開催の要因となっている。意外に思われるかもしれないが、説明してみよう。

 ボクサー・ライセンスの保持者(要するにプロボクサー)は1994年に2000人を超え、'04年に最盛期を迎えて3630人に達した。テレビのバラエティ番組の企画『ガチンコ・ファイトクラブ』が人気だったころである。

 ここからボクサー・ライセンス保持者は減少を続け、'16年に2000人を割り、'18年は1736人。なんと最盛期の半分以下まで減ってしまった。

 業界も大いに危機感を持ち、37歳定年制ルールを緩和したり、プロテストの受験資格年齢を引き上げるなどの対策を取ってきた。結果、ベテラン選手が引退せずに残るケースは増えたものの、若いボクサーは決して増えていない。いま、ボクシング界ではキャリアの浅い選手が主体の4回戦ほど試合を組むのが難しい、というのが現状だ。

強い選手ほど相手が見つからない。

「選手が減っているので日本人選手同士の試合が組みにくい。若手選手を大切に育てようとするあまり、思い切ったチャレンジマッチに二の足を踏むケースも見られます」(古澤代表)

 この状況であおりを食っているのがアマチュアで実績を残してプロデビューした選手たちだ。彼らの多くはC級(4回戦)ではなく、B級(6回戦の試合ができる。4回戦で4勝すると昇格)でデビューをする。アマチュア経験のないB級選手とアマ出身の実力者では、多くの場合、後者のほうが実力は高い。

 こうなると対戦相手がなかなか見つからない。タイトルホルダーではない実力者が嫌われるのは古今東西の常識で、さらに選手数の減少がもともと困難な事情に拍車をかけるのだからたまらない。

 相手のいないアマ出身選手はデビュー戦から実力の不確かな(たいてい弱い)外国人選手とばかり戦うはめになり、経費ばかりかかって経験値をなかなか上げられない、という悪循環に陥ってしまうのだ。

【次ページ】 エリートと叩き上げ、共通の目標は世界。

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