プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ランパード監督就任が秒読み段階。
レジェンドに託すチェルシーの思惑。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/06/22 11:30
フィニッシュに絡めるタイプだったランパード。スタンフォード・ブリッジのテクニカルエリアに立つ姿が見られるか。
アブラモビッチと続く短期政権。
フランク・ランパードでなければ、声は掛からなかったとの見方もある。
59歳ながらタイトル歴のないサッリの就任が異例と言われたが、監督歴1年の41歳ランパードが後任となれば、それこそ異例中の異例である。昨季のダービーでも、他の人物であれば「成功」とまでは言われなかったかもしれない。
なにせ、プレーオフ決勝進出で昇格まであと一歩に迫ったが、リーグ順位は6位。前シーズンから横ばいの成績だったのだから。
それだけに、チェルシーは「センチメンタル」になったと評されている。新米監督のリスクに目をつぶり、元人気選手にラブコールを送ったとされているからだ。
これまで「帝政」とも表現されるアブラモビッチ政権下では、「情け無用」の監督人事が当たり前だった。
2003年のクラブ買収以来、暫定監督を含めれば、ほぼ70試合に1度の割合で指揮官が交代。そんな16年間を送ってきた。チェルシー経営陣が、チーム作りを長期展望で臨むうえで必要な“辛抱”ととらえるきっかけになったのかもしれない。
事実上2シーズンの猶予を与える?
ランパード自身は時間的な猶予を望んでいるはずだ。思わぬ早さで訪れた古巣で指揮を執るチャンスは、ダービーで残り2年間の契約を全うしても再び訪れるという保証などない。
ただ、このタイミングでケタ違いのプレッシャーを背負うチェルシーを指揮すれば、指導キャリア2年目にして大きなダメージを受ける危険性も否定できない。実際、内輪の人間には不安を打ち明けたとも報じられている。
アブラモビッチは、2度の移籍市場を使い、時間を与えることを口約したという。その時点で、来季は補強が許されない可能性は承知していたはず。つまり、事実上2シーズンの猶予を与えると告げたようなものだ。異例の譲歩と言える。
ランパードは「自分は辛抱強い方だし、その必要性も学んでいる」と語っている。これは昨年8月のプレストン・ノースエンド戦後、筆者の「現役時代よりも辛抱の大切さを痛感しているか?」との質問への回答だったわけだが、この言葉は若手の多いチーム事情を反映したものだった。