プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ランパード監督就任が秒読み段階。
レジェンドに託すチェルシーの思惑。
posted2019/06/22 11:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto Press
フランク・ランパード。就任発表は時間の問題と言われるチェルシー新監督の人選は、クラブにとって、その名前が意味するものこそが最大の理由だ。
昨季2部のダービーで監督としてのスタートを切った本人には、オーナーであるロマン・アブラモビッチが直々に就任要請の電話を入れたようだ。マウリツィオ・サッリ退任により、転任先のユベントスから手に入れる推定500万ポンド(約7億円)の補償金の8割相当が、ランパード引き抜きの違約金としてダービーに支払われる見込みである。
多くのファンは20日にチェルシー公式アカウントから発信された「Happy Birthday Frank Lampard!」とのツイートで、レジェンド帰還への期待を煽られている。
チェルシーとランパードの“絆”。
ランパードと聞いて一般的なプレミアリーグのファンは、ずば抜けた得点力を持ったMFをイメージするだろう。ただ、チェルシー・サポーターが想起するのはそんなMF像を超える偉大なものだ。
2005年、ボルトン戦での2得点を思い出せば、半世紀ぶりのリーグ優勝が決まった喜びとともに、それまで味わったことのない「高揚感」が胸に蘇る。2008年にリバプールとのCL準決勝第2レグで決めた得点も印象深い。
インタビューで自らを「ママズ・ボーイ」と認めており、母親を亡くした翌週の大一番で蹴ったPKはメンタルの強さを見せつけた。
悲願のCL優勝を成し遂げた2012年、バルセロナとの準決勝第2レグで上がった反撃の狼煙は、ランパードのアシストによるもの。敵地での劣勢に主将ジョン・テリーの退場による数的不利まで加わったピッチで、不屈のチーム・スピリットを体現したスルーパスだった。
30代後半の大ベテランとなり、マンチェスター・Cに所属した2014年には、ホームで古巣チェルシー相手に同点ゴールを決めた。その際、得点を喜ばないどころか困惑した表情を浮かべたランパードと、アウェーのスタンドの陣営からも起こった拍手が、チェルシーとの“絆”を痛感させた。
いずれも、現在のチェルシーが取り戻したいと願う要素ばかりだ。