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<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.3>
“好敵手”を乗り越えて。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/07/11 11:30
左から、男子66kg級・丸山城志郎(ミキハウス)、男子団体90kg級・村尾三四郎(東海大学1年)、男子団体90kg超級・影浦心(日本中央競馬会)
負け続けて強くなった男、影浦心。
「僕は負け続けて、強くなれた選手だと思います」
男子100kg超級の影浦心は、これまでを振り返りつつ、そう口にする。
中学、高校時代は、全国大会に出場し上位の成績は残していたものの、中学校柔道大会でも、インターハイでも優勝には届かなかった。
それでも着実に地力をつけていくと、大学生活の中頃を過ぎた頃から、シニアの国際大会にも出られるようになった。
今日では、重量級を担う存在の1人と目されている。
ゆっくりとした、でも着実なその歩みを支えるのは、「自分を信じる力」であると影浦は言う。
「自分のことは自分でしか信じられない、信じられないと勝てない。自分がいちばん強いと思ってやらないと、張り合っているライバルたちに勝てないと思うんです」
心に抱き続けている夢がある。オリンピックでロンドン、リオデジャネイロと連覇するなどこの階級に長年にわたり君臨し続ける王者リネール(フランス)に勝つことだ。
「大学3年生くらいからリネールのことをずっと意識しています。自分にしか倒せないと思っているので」
それもまた、自分を信じる力にほかならない。
泥から這い上がってきたエネルギー。
そんな影浦が目標と定めるのは、来年の東京オリンピック。
ただ1つの出場枠を勝ち取るためには、第一人者の原沢久喜ら、ライバルを上回らなければならない。原沢には2017年に2度勝利していることに触れつつ、こう語る。
「あまり苦手なタイプじゃないから自信はありました。何があってもオリンピックの畳に立つ、絶対に出るという気持ちが強い選手が最後に残ると思います。僕にはそういう気持ちがあります」
今秋には、2019世界柔道団体戦が控える。
「出た試合には必ず勝って、そこで活躍して、影浦もいいなと思ってもらえるようにしたいです」
自分を表す言葉は、「泥くさく」。
「泥から這い上がってきたのが自分だと思っています。まわりを見返してやろうと、負けた屈辱をエネルギーに変えて、取り組んできました」
誰にも譲らない。そんな思いとともに、2019世界柔道団体戦に臨む。