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板倉滉が味わった屈辱とめんつゆ。
コパ・アメリカで鬱憤を晴らす。

posted2019/06/15 11:45

 
板倉滉が味わった屈辱とめんつゆ。コパ・アメリカで鬱憤を晴らす。<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

今季オランダに活躍の場を求めるも、出場ゼロに終わった板倉滉。悔しい思いをコパ・アメリカの舞台でぶつける。

text by

松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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Atsushi Hashimoto

 試合に出られぬ苦味と、それを癒す、めんつゆの甘じょっぱさ。

 板倉滉にとっての、この半年間の思い出の味である。

 今年1月、イングランドの超名門マンチェスター・シティへの移籍が決まった。すぐさまオランダのフローニンゲンへのレンタル移籍が発表され、新たな「欧州組」となった。

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 最初の2カ月は、ホテル暮らし。まず、オランダの食事に驚いた。ステーキが、皿の中央にどっかり居座り、その周りにポテト、ポテト、ポテト。注文したくても、レストランのメニューにライスは、ない。それが、何日も続く。

「当初はステーキもポテトも、出されたものは全部、バクバク食べていたんです。チームメイトはみんなこういうものを食べて、あれだけ良い体をしている。体重が減るのは良くないし、僕もいけるだろうって。でも、やっぱりきつかったですね」

「まだ、お前のことを知らないんだ」

 ピッチの中でも、移籍当初はボールやピッチの質の違いに戸惑った。不慣れな右サイドバックのポジションで練習することも多く、Jリーグ時代にはあり得なかったようなミスもした。それでも2月23日、セカンドチームにあたるフローニンゲンU-21で“オランダデビュー”を果たす。

「U-21は、チームごとに対戦相手のレベルがかなり違います。けっこう強いなと感じるチームもあれば、Jリーグよりも圧倒的に劣るチームもある。僕自身が対戦相手の攻撃を見て、『そこでパスをつながずに蹴っちゃうの?』って思うこともありました」

 強度の高いフローニンゲンの練習にも徐々に慣れ、U-21の試合では本職のボランチでもアピールした。しかし、その場にトップチームのダニー・バイス監督の姿はなかった。

 トップチームのリーグ戦では、ベンチ入りは果たすものの、出番がないままタイムアップの笛を聴く日々。痺れを切らし、ある日、監督に直接尋ねた。

「なんで俺を、試合に使わないんですか?」

 指揮官からは、あっさりこう返された。

「まだ、お前のことを知らないんだ」

 フラストレーションと焦りを感じながら、時間だけが過ぎていった。

【次ページ】 私生活でも自炊を、筋トレも増えた。

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