ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
飛距離アップを目指す今平周吾。
オーガスタで痛感した「ミス」の差。
posted2019/06/05 07:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Getty Images
「ボールが止まって見える」
かの打撃の神様・川上哲治が残したとして知られる名文句である。本当のところは同時代のスラッガー、小鶴誠の言葉だったという文献もあるが、ひとまずそれは置いておこう。
向かってくるはずの豪速球が目の前で止まってくれたら、ヒットを打つのはきっとカンタンだ。いつもそんな風に感覚が研ぎ澄まされた状態であれば、きっと好打率が期待できる。
だが、打つべきボールが止まっているのに、思い通りにいかないのがゴルフである(ちなみに小鶴は20世紀半ばに“ゴルフスイング打法”で活躍したホームランバッターだったそうだ)。
まあ、野球の場合は3回に1回、安打を記録できれば歴史に名を残す大打者になるが、ゴルファーが満足いくショットを3回に1回しか打てなかったら、とんでもないスコアになってしまう……。
しかしながら、ゴルファーはその「満足いくショット」を、1ラウンドにおいてどのくらいの割合で打てるのだろうか。例えばトッププロなら、いつも思い通りに球を操っているように思えてならないが、彼の話を聞いていると、どうも実情と世間の想像とではギャップがありそうなのだ。
海外メジャーで苦戦する今平。
2019年、26歳の今平周吾が海外遠征を繰り返している。
前年度の日本ツアー賞金王は4月のマスターズをはじめ、5月の全米プロにも出場した。正直言って、成績は芳しくない。メジャーでの予選通過はキャリアで未だゼロ。一方、日本ツアーに帰ると6試合でトップ10入り3回と、多くの先輩たちと同じように海外の環境やコースの違い、そしてレベルの差が目の前に壁として立ちはだかる。
身長165cm。ショットの精度の高さにかねて定評があるが、世界中の飛ばし屋たちに比すると、まず飛距離不足が否めない。