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戸塚、菊原、財前、そして中島翔哉。
読売クラブと異才の源流にいる男。
text by
加部究Kiwamu Kabe
photograph byAFLO
posted2019/06/01 12:00
その突破力で異彩を放った与那城ジョージ(中央)。松木安太郎らも在籍した読売クラブらしい、尖った才能だった。
先輩を敬うという「Rくんの功績」。
ただしそんなヴェルディにも、どこかで先輩を敬う習慣が出来上がる。小見が笑いながら教えてくれた。
「そこはRくんの功績でしょうね。プロになって、いつの間にか“小見さんよりいい車に乗ってはいけない”という不文律が生まれたようです。ルーキーながらポルシェで現れるとボンネットの上に砂が積まれ、ある大卒新人選手のベンツの上には玄関のマットが干されていました」
冗談じゃないよ! 100年早いんだよ! と甲高い怒りの声は、ずっと若手の耳に響き続けたに違いない。
与那城は、スプリントした選手が声を出してパスを求めると、たしなめるように近づいて声をかけた。
「判ってるんだから声出すなよ。相手にばれるだろ」
一方で黙って走れば「これは決めろよ」という完璧なパスが出て来る。ただし決めなければ、次は出してもらえない。そのプレッシャーで、本来図太いはずの戸塚が、一時期はパスを受けるのが怖くなったという。
別格のテクニックと闘いの本質を備えた与那城を見本に、後を追う選手たちも喧嘩腰で要求をぶつけ合い切磋琢磨して来た。いつしか与那城を知らない世代がやって来ても、伝統の根幹は揺るがなかった。
それらは全てブラジルのストリートの論理だ。そしてそこにはプロのエキスが詰まっている。
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