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戸塚、菊原、財前、そして中島翔哉。
読売クラブと異才の源流にいる男。
posted2019/06/01 12:00
text by
加部究Kiwamu Kabe
photograph by
AFLO
今でもヴェルディの緑のピッチからは、プロフェッショナルが溢れ出ている。
森保一監督体制下で中島翔哉(アル・ドゥハイル)、小林祐希(ヘーレンフェーン)、畠中槙之輔(横浜F・マリノス)、安西幸輝、三竿健斗(以上鹿島アントラーズ)、渡辺皓太(東京ヴェルディ)と計6人の育成出身者が日本代表に選出され、例えばJ1第12節ではここで薫陶を受けた選手が10人以上も先発フル出場を果たした。
また女子は男子を質で凌駕し、フランスワールドカップの日本代表には日テレ・ベレーザから10人、ここから巣立った宇津木瑠美、岩渕真奈も加えれば、過半数の12人もの出身選手を送り込んでいる。
さらに遡れば、戸塚哲也、菊原志郎、山口貴之、財前宣之と、テクニカルで駆け引きに長けた異才は枚挙にいとまがない。
では、なぜヴェルディ(と前身の読売クラブ)には、そんな伝統が積み上げられたのか。クラブの色が定まっていく過程で決定的な役割を果たしたのは、創設当初にブラジルからやって来た日系2世の助っ人プレイヤーだった。
ジョージ与那城というマジシャン。
後に日本国籍を取得し、姓名の並びが逆転するジョージ与那城は、読売クラブの1期生である小見幸隆の「教科書」であり、都並敏史以下の若い選手たちの「憧れのマジシャン」だった。
「チームで一番の駿足で、上手くて強くて機転が利く。目が合ったわけではないのに、とんでもなく素晴らしいスルーパスが出てくる。それまで見たことのある選手とは次元が違いました」
小見が解説を続ける。
「ブラジルでは11人制のサッカーだけではなく、サロン(フットサル)、ビーチなど、いろんなものをやり込んでいく。裸足でプレーするとよく判るんですが、ジョージは足首から先が物凄くよく動いて、足裏でボールを押さえつける力が半端ではない。指で引っかくようにボールを掴んでしまいますから」