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戸塚、菊原、財前、そして中島翔哉。
読売クラブと異才の源流にいる男。 

text by

加部究

加部究Kiwamu Kabe

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photograph byAFLO

posted2019/06/01 12:00

戸塚、菊原、財前、そして中島翔哉。読売クラブと異才の源流にいる男。<Number Web> photograph by AFLO

その突破力で異彩を放った与那城ジョージ(中央)。松木安太郎らも在籍した読売クラブらしい、尖った才能だった。

「なんだ、あの技は!」の毎日。

 やがて日の丸を背負う都並も戸塚哲也も、次々に繰り出される与那城のマジックを、精一杯背伸びをして夢中で真似た。

「なんだ、あの技は! と、毎日がその連続でした。とにかくジョージさんの技は全て盗みたかった。仲間が何かを身につけると、やばい、オレ、遅れてる、と焦りまくる」(都並)

 与那城の一挙一動を追えば、間違いなくサッカーが上手くなる。スタッフも選手も、そこには疑いがなかった。

 いつしかクラブでは、5対2の鳥かごが伝統になった。グリッドを置かず、人の塊は変形しながら移動していく。味方は敢えて適切なパスコースを作らず、鬼が代わった瞬間に奪い返しに出る。

 鬼が交代したら「初めの1本は通す」ような生温い礼儀はないので、外部では「ずるい」と非難されたが、小見の説明を聞けば読売の常識が一歩先んじていたことが判る。

松木が攻撃参加した瞬間に……。

「攻守の切り替え? この言い方だと、取られてから取り返すイメージですよね。でも一番ボールを奪い易いのは、奪われた瞬間です。僕は、右SBの松木安太郎がオーバーラップに出た瞬間に、予めボールを失うかもしれないと準備に入る。

 ジョージは僕に“オレがドリブルに出たら、すぐ後ろについてきてくれ”と言っていました。ジョージが仕掛ければ、ほとんど奪われることはない。でも万が一相手に引っかけられても、僕がサポートしていればビッグチャンスになるんです」

 読売の掟には、切り替えのひと休みと同様に、年齢や性別に応じた手加減も一切なかった。中学入学とともにベレーザ入りした未来のエース野田朱美は、与那城やラモス瑠偉も混じる男子の中で2時間も鳥かごの鬼を続けた。

「ジョージは、今だ、というパス出しのタイミングを逃すと、露骨に“もう遅いんだよ”という表情をしました。戸塚は相手が先輩でも“もう50cmこっちなんだよな”と文句を言うし、菊原志郎も平気で“なに、今のパス?”と嫌な顔をしていました」(小見)

【次ページ】 鳥かごの鬼にならないエジムンド。

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