ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
“ロベリー”がバイエルンを去る日の涙。
サポーターも、警備員も、審判も。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/05/26 08:00
最終節でブンデスリーガ7連覇を達成したバイエルン。(前段左から)ロッベン、ラフィーニャ、リベリーの最後の勇姿にサポーターたちは涙した。
憎き「FCハリウッド」、「ロベリー」に嫉妬。
実は僕、アンチ・バイエルンです。昨季までブンデスリーガ6連覇。豊富な資金力を誇示して優秀な選手をかき集め、「FCハリウッド」などとも揶揄される常勝チームを内心苦々しく感じていたのは事実。特に「ロベリー」と称されたロッベンとリベリーの活躍ぶりにはジェラシーにも似た感情も芽生えて、ほぼワンパターンでゴールゲットして歓喜する彼らの姿に興ざめしたりしたものでした。
でも、僕って本当に単純です。
レジェンドたちが歩んだ道のりは絶対に苦難が伴っていて、その障害を乗り越えた先に栄光があり、だからこそ彼らは、常に支えとなったファン・サポーターの真心に触れて感情を露わにする。拭いても、拭いても、その頬に流れるリベリーの涙はどこまでも高潔。
彼とサポーターとで紡がれた絆に触れた僕は、思わず記者席に置いたパソコンの画面を凝視して涙を堪えましたが、もはや手遅れ……。
情熱家と寡黙な闘士。
さて、ロッベンはどこへ? 見当たらない。あっ、遅れてロッカールームから出てきました。リベリーほどには感情を表に出さず、彼もウォーミングアップのルーティンワークをこなしています。
でもビジョンに再び功績の数々が映し出され、最後に2012-2013シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝ドルトムント戦で決勝ゴールを決めた姿が映し出されると地鳴りのような大歓声が……。
その瞬間、ロッベンはスッと背筋を伸ばした刹那に猛ダッシュして力強いステップを踏みました。リベリーが感情豊かな情熱家なら、ロッベンは寡黙な闘士。好対照な2人の振る舞いには、黄金期を築いたバイエルンに君臨したスターの得難い個性が表れていました。