ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
“ロベリー”がバイエルンを去る日の涙。
サポーターも、警備員も、審判も。
posted2019/05/26 08:00
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Uniphoto Press
泣いちゃいました。
2018-2019シーズンのドイツ・ブンデスリーガ最終節。バイエルン・ミュンヘンvs.アイントラハト・フランクフルトの取材に向かうため、フランクフルト中央駅からドイツ高速鉄道のICE(INTER CITY EXPRESS)に乗り込みました。
車内ではフランクフルトサポーターが携帯スピーカーで大音量の歌を響かせて大合唱。なにせ今日の試合はバイエルンにとってリーガ優勝、フランクフルトにとってはUEFAヨーロッパリーグ出場権獲得が懸かった大一番。少々羽目を外すのも致し方なく、一般の乗客もそのあたりは寛容です。
千差万別のファンが目指すはアリアンツ。
ミュンヘン中央駅に近づくと、上空には澄んだ青空と真っ白な雲が鮮やかな色彩を放っています。ホームに降り立つと春の訪れを告げる暖かな風が吹き付けて、気分が高揚してきました。
地下鉄のUバーンに乗るために階段を降ると、赤いユニホームを身に纏った人々が大挙してホームに並んでいます。その年齢層は実に千差万別で、ビール瓶片手に気勢を上げる若者集団の傍で、抱っこする愛娘に顔を寄せて微笑む女性がいて、ベンチでは老夫婦が仲良く手を繋ぎながら何かを語り合っています。
ネオゴシック様式の新市庁舎が建つことで有名なマリエン広場で乗り換え、ミュンヘン中心部からアリアンツ・アレナまでは約20分の道のり。車両は途中で地下から地上へ出て、新緑の並木道に沿うようにして目的地へと進みます。
前方に小高い丘が見えてきました。でも、まだ“あの姿”は見えない。大型宇宙船のような威容を誇るアリアンツ・アレナは、その丘の先、風力発電のプロペラ式風車に囲まれ、広大な草原の上に凛と建っています。