野球のぼせもんBACK NUMBER
2勝7敗とロッテに苦戦のホークス。
要因は「甲斐を知り尽くすコーチ」か。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2019/05/24 07:00
昨年の日本シリーズで6度も盗塁を阻止し、育成出身選手初のシリーズMVPに輝いた甲斐拓也。ロッテ戦の配球に注目が集まる。
気になる元コーチたちの存在。
ただ、もしかしたらいつの日か……との予感を一度は誰しもが抱いたはずだ。
近年のロッテはソフトバンクで指導者経験のある人材をコーチに数多く登用している。
・鳥越裕介(2007年から2017年、ソフトバンクで二軍監督や一軍内野守備・走塁コーチ等。2018年からロッテで一軍ヘッドコーチ)
・的場直樹(2013年、ソフトバンクでスコアラー。2018年からロッテで一軍戦略兼バッテリーコーチ)
・清水将海(2012年から2017年、ソフトバンクで一軍バッテリーコーチ等。2018年からロッテで一軍バッテリーコーチ)
・吉井理人(2015年、ソフトバンクで一軍投手コーチ。2019年からロッテで一軍投手コーチ)
その効果がついに現れてきたのか。
特に鳥越コーチが移籍したことを嘆いたタカファンは多かった。指導は厳しくて、ちょっと毒舌。だけど、そこには必ず「愛」があった。一人前のプロ野球人として、ひとりの人間として選手と向き合い、成長の為に共に歩む姿と熱意はファンにも伝わるほどだった。
鳥越コーチが就任して以降のロッテは、ベンチの声の大きさが増しているように感じる。もともと「和」を大切にするチームだったが、その一体感はより強固になったのではなかろうか。
失点も多いロッテ戦。
だけど、今季の対ロッテ苦戦の引き金となっているのは清水バッテリーコーチの存在ではないかというのが、筆者の見解だ。
打てていない今季のロッテ戦だが、失点もじつに多い。9試合で43失点。対戦防御率は4.67だ。
気になるのは数字よりも打たれ方だ。何か気持ちよくバットを振られているように見えて、不気味に映るのである。
ここまでの9試合で被本塁打は10本。その内訳を調べてみた。
4月5日、中村奨吾に2打席連続本塁打を浴びた。いずれも初球だった。翌6日には加藤翔平にも2打席連発を食らったが、これまたどちらも初球だった。
10被本塁打のうち初球を含めたファーストストライクを狙い打ちされたのが7発もある。また、流し打って逆方向に叩き込まれたのが10発中5発を数える。恐れることなく外角球に踏み込まれている証拠だ。
これだけの根拠が揃うと、正捕手としてマスクを被る甲斐拓也のリードの傾向が読まれているのではないかと考えるのだ。
取材を重ねる中で、甲斐は感性よりもデータを重視してリードする傾向が強いという声をいくつか聞いた。ホークスは12球団の中でも最先端のAI野球データを活用している球団だ。有能なデータ分析担当が複数名在籍し、日常的に選手と密な連携をとっている。