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「ゆるくラグビー観戦」という文化。
オーストラリアの週末で見た解放感。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byMiho Watanabe

posted2019/05/23 07:00

「ゆるくラグビー観戦」という文化。オーストラリアの週末で見た解放感。<Number Web> photograph by Miho Watanabe

おどろくほど「ゆるい」空気の中でラグビーの試合が続く。日常に溶け込む、とはこういうことなのかもしれない。

笑って、足踏みして、文句を言って、そんな週末。

 週末の余暇なのだ。観戦のハードルは低いほうがいいし、解放感があればさらにいい。

 メインイベントとなるファーストグレードの試合は、“マーリンズ”が41-39で勝利した。ジワジワと点差を詰めて上位チームに逆転勝ちする展開が、スタジアム全体に興奮を運んでいった。

 友人同士で笑って、好プレーに拍手をして、もっと押し込めと足踏みをして、ビールとワインをたくさん飲んで、酔いにまかせて判定にちょっと文句を言ったりして、行列に並んでもう一杯ビールを買って──最後にはスタンディングオベーションで選手を讃えて、ゴミを集めて席を立つ。

 “マーリンズ”を応援した人たちは、ありきたりでも幸せな時間を過ごして、夕暮れの街並みに溶け込んでいった。

 ちなみに、マーリンズからスーパーラグビーのクラブへステップアップし、ワラビーズことオーストラリア代表まで上り詰めた選手もいる。

 '03年と'07年にワールドカップ出場を果たし、サントリーでもプレーしたジョージ・スミスや、'15年ワールドカップ準優勝メンバーのマイケル・フーパーは、“マーリンズ”にルーツを持つ。フーパーは現チームで主将を任されるフランカーだ。

 週末の娯楽として親しまれるローカルラグビーからも、トップレベルの選手を輩出することはできるのだ。

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