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アメリカ時代のコーチが感心した、
富樫勇樹のリーダーとしての成熟。
text by
永塚和志Kaz Nagatsuka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/05/19 11:45
ファイナルでは3本の3ポイントを含む19得点、6アシスト。今季のBリーグMVPにも輝いた富樫勇樹。
NBDL時代の富樫を知るコーチが。
ファイナル進出を懸けたチャンピオンシップ・セミファイナルの栃木ブレックスとのシリーズ。富樫の、NBDL(現Gリーグ)テキサス・レジェンズ時代のアシスタントコーチだったタイラー・ガトリン氏の姿があった。
現在はNBAサクラメント・キングス傘下のGリーグチーム、ストックトン・キングスでアシスタントコーチを務める氏にとって、富樫に会うのは2人がレジェンズに在籍した2014-15年シーズン以来だった。
当時、まだ21歳だった富樫をガトリン氏は「少しシャイだった」と、微笑みを交えながら振り返った。
コーチと言ってもガトリン氏も今、まだ31歳。富樫との関係も指導者というよりは同志のようなものに近い感じがした。実際、氏は自身と富樫の間には「強い絆」があると話している。来日は初だったが、昨シーズンのファイナルも含めて普段から富樫の動向を映像で見ているようだ。
「(レジェンズ在籍時は)毎日、練習の後に100本の3ポイントを打つなどのルーティンをこなしていたし、試合の前にもボールハンドリングなどのドリルに一緒に取り組んでいた」(ガトリン氏)
リーダーらしい姿に感銘を受けて。
それでも、今と比べて当時の富樫は若く、年相応に粗かったのだろう。無鉄砲だったわけではないだろうが、その頃の彼はボールを持てば自身の類まれなスピードを頼ってひたすら中へ突っ込むことが多かったという。
今の富樫はもう、その当時の彼ではない。もっとも、プレイスタイルが変わったわけではない。バスケットボール選手として、司令塔のポイントガードとして、成熟度を増したのだ。それなくしてジェッツのここまでの飛躍はなかったはずだ。
ガトリン氏に話を聞いたのはセミファイナル第2戦の前だったが、前日のシリーズ初戦を振り返って、富樫がリーダーとして大きく成長したことに感銘を受けた様子だった。彼がとりわけ強調したのが、富樫がチームメートとよくコミュニケーションを取り、的確に指示を出せるようになっていたことだ。