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イチローと松井秀喜の野球指導観。
共通する、データ偏重への違和感。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byAFLO
posted2019/05/17 11:30
2003年のオールスターではチームメイトとして戦ったイチローと松井。同じグラウンドに再び立つ日は来るのだろうか。
データ偏重に違和感を表明する共通点。
ただ、日米両国の野球を熟知するイチロー氏と松井氏が、米国流のすべてを肯定しているわけではない。時代の変遷とともに変化していく球界の在り方、特にデータ偏重主義の野球観に、少なくとも違和感を覚えていることを隠そうとしない。
図らずも、イチロー氏は引退会見で強烈なメッセージを残した。
「2001年に僕がアメリカに来てから、2019年の現在の野球は全く別の違う野球になりました。頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような……。本来は野球というのは……頭を使わなきゃできない競技なんですよ(中略)。
だから、日本の野球がアメリカの野球に追従する必要なんてまったくなくて、日本の野球は頭を使う面白い野球であってほしいと思います。アメリカのこの流れは止まらないので、せめて日本の野球は決して変わってはいけないこと、大切にしなくてはいけないものを大切にしてほしいと思います」
松井氏の場合も、ほぼ同意見に近い。
「野球もいろんな楽しみ方があって、僕がやっていた時代とは変わってきた。コンピューターとかデータに支配される野球というのは、今の人達に普通になっているんであれば、それはしょうがないかもしれない。自分はそんなにどっぷり浸かってないですから、今の野球に対してマイナーでは言ってます。そのうち、古いと言われるだけでしょうけどね」
同じグラウンドに立つ日は?
1歳違いの2人は、高校時代の定期戦で初めて顔を合わせて以来、日米両国で交錯してきた。プレースタイル、性格ともまったく違うタイプながら、ともにファンからこよなく愛され、抜群の存在感を示してきた。
その2人に共通するものがあるとすれば、野球への愛情、そして日本球界への恩義――。
今は、米国で静かに若手の成長を見ながら、野球界の潮流を見極め、機が熟すのを待っているのかもしれない。
令和の新時代。
平成を支えた2人の歩む道が再び交錯し、同じグラウンドに立つ日は来るのだろうか。