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前人未到の記録に挑む田中将大。
“新人”菊池雄星に贈ったメッセージ。

posted2019/05/12 11:30

 
前人未到の記録に挑む田中将大。“新人”菊池雄星に贈ったメッセージ。<Number Web> photograph by Kyodo News

試合前に握手を交わすヤンキースの田中将大(右)とマリナーズの菊池雄星(左)。

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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Kyodo News

 ヤンキースタジアムでふたりの日本人投手が質の高い投球を見せてくれた。まさに日本人投手ここにあり、を思わせる高い投球術に令和の時代もおおいに期待したい。そんな気持ちにさせられた。

 7日(日本時間8日)、ヤンキースの田中将大はマリナーズ戦で6回1/3を5安打、2失点。勝敗は関係なかったが好投を見せた。

 その中で、実は彼らしくない数字が並んでいた。95球中、宝刀スプリットはわずかに12球。この割合だけで彼の変調がわかるが、それだけではない。スプリットで奪った空振りはゼロ。更に得点に絡んだ長打はいずれもスプリットを痛打されたものだった。

 彼がどれほど今、苦しんでいるのか。それがわかろうというもの。だが、それでも、彼は試合を壊さなかった。

 真のエースとは、どんな状態でも試合を作る。それが称号を与えられた者の使命だ。まさに今回の投球はそれであり、我慢強い投球がチームのサヨナラ勝ちにつながった。相手ベンチから熱い視線を送った新人・菊池雄星に示した先輩のプライドと感じた。

「数字(7回途中2失点)だけを見れば、今日はナイス・ピッチングとなるわけでしょうけど。だけどやってる本人はそれでいいわけではない。繰り返しになりますけど、自分の課題と向き合って、バトルし続けて、何とかまたそれを乗り越えて、いい投球ができるようにと思います」

ベンチ最前列で新人を見守る先輩。

 その翌日。菊池は高校時代から憧れ続けたヤンキースタジアムで初登板、初勝利を飾った。メジャー最長の7回2/3を3安打、1失点の2勝目。

 その菊池もこの試合は自慢の直球が走らなかった。

 前回登板となった3日のインディアンス戦は最速97マイル(約156キロ)を計測したが、この日の最速は94マイル(約151キロ)止まり。ならばと切り替え、カーブ、スライダー、新球チェンジアップも多投。ホームプレートの両サイドを使う配球に活路を見出した。

「直球が思うようにいかない中でスライダーとカーブを外のボールから入れるのと(内の)ストライクからボールになるのと上手く散らしながら投げられた。いろんな引き出しが毎試合増えている。配球も少しずつ変わってきている」

 投げるたびに成長の跡を見せる菊池の投球にマリナーズのスコット・サービス監督は「彼は勉強家。宿題は必ずやってくる。大きなステップとなる登板だった」と、褒め称えた。

 新人らしく、懸命に腕を振る菊池の投球を田中はベンチ最前列にひとり立ち、最後まで見届けた。敵軍ながら、先輩が後輩を見守る光景はメジャーならではと言えた。

【次ページ】 ショートスタートへの葛藤。

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