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錦織圭、苦戦しつつも16強に進出。
コートでのつらそうな顔が気になる。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byAFLO
posted2019/05/09 12:45
実力差がある相手に短い時間で勝つことは、トーナメントを戦い抜くコンディションの面でも錦織圭にとって大切なことだ。
6-1や6-2で取れるセットだった。
5-3の第9ゲーム。錦織は3度のセットポイントを逃し、第10ゲームは再びサービスを破られ、4ゲームを連続で落とした。それでも第11ゲームは、8度目のブレークポイントをようやく物にする。最後は錦織が攻めたわけではなく、相手のボレーミスで決まった。
6-5の第12ゲーム。40-0からフォアをネットに掛け、得意のドロップショットもネットを越えてくれない。もやもやする展開の中、最後は何とか相手のミスを誘い、1時間ほどかけてセットを先取。地力の差を考えれば、相手の反撃を許すことなく6-1や6-2で取るべきセットだった。
錦織の口からでた「詰めの甘さ」。
圧倒的に優勢だった第1セット途中から、デリエンに追い上げられた要因は自分か相手、どちらにあったと感じているか。試合後、それを尋ねた。
「(デリエンの)ミスが減ってきたのと、吹っ切れてきたのかなという感じはしました。最初はボールが浅かったり、ミスが早かったりしたけど、そこでチャンスを与えてしまったのは自分の詰めの甘さ、っていう可能性はあるかもしれないですね」
語尾をふんわりとさせたものの、「詰めの甘さ」という言葉が出るのは、そう感じる場面があったからだろう。
第2セットも苦しい状況を引きずった。第5ゲームは4度、第7ゲームは2度のブレークポイントを逃した。第9ゲームでやっとブレークしたかと思えば、キープすれば勝利という5-4の第10ゲームで第1サーブが全く入らず、簡単にブレークされてしまう。
それでも、第11ゲームでは久々に豪快なバックのダウンザラインを決めてプレッシャーを掛け、ブレーク。第12ゲームは、ラブゲームで締めた。24度も握ったブレークポイントを、19度しのがれた。反省の気持ちが心の大半を占めたに違いない。試合直後の晴れない表情から、それが推し量れた。