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大坂なおみは赤土を克服できるか。
「ゾンビモード」でマドリード16強。
posted2019/05/08 11:40
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
Getty Images
5月7日午前11時から始まった試合前の練習。心地良い初夏の風が頬をなでるマドリードの青空の下、大坂なおみはサーブを打たず、わずか13分で練習を切り上げた。
4月下旬のポルシェ・グランプリで痛め、準決勝を前に棄権する原因となった左腹筋痛が、5月5日の1回戦後に再発したのか――。笑顔でファンに対応する21歳を見ながら勝手に不安な思いを膨らませていたが、その点に関しては全くの杞憂だった。
世界ランキング73位のサラ・ソリベストルモ(スペイン)との2回戦。1990年代に四大大会女子シングルスで3度優勝した地元出身、アランチャ・サンチェスの名を冠したスタジアムの客席は、平日の昼過ぎとあって半分も埋まっていなかった。
それでも、熱心なファンからは「バモ(頑張れ)、サラ!」と何度も大きな声援が飛び、大坂にとってはアウェーの雰囲気だった。
第1セットは相手に粘られながらも、タイブレークを7-5で制して先取。第2セットはミスを重ね、奪い返されてしまう。それでも、最終セットはショットの正確さを取り戻し、1ゲームも与えず力の差を示して16強に進んだ。第1サーブは最速190キロ台をマーク。腹筋周辺を気にするそぶりは全くなかった。
「少しラッキーだった」勝利。
腹筋痛の不安を感じさせなかった一方、いい時の大坂を知っているファンは歯がゆさを感じる場面が多かったのではないか。
第1セット第3ゲームはリターンを深く突き刺してブレークしながら、直後のサービスゲームでは40-15からショットのミスを重ねてブレークバックされ、その後も決め手を欠いて一進一退の展開。タイブレークでは5-1から再びショットにミスが出て追い上げられると、セットポイントを握った場面でトスが乱れ、ダブルフォールトを犯して6-5に。
最後はフォアのストレートを見事に打ち抜いたが、どちらに転んでもおかしくない紙一重の内容だった。大坂自身、「少しラッキーだった」と振り返っている。