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錦織圭、苦戦しつつも16強に進出。
コートでのつらそうな顔が気になる。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byAFLO
posted2019/05/09 12:45
実力差がある相手に短い時間で勝つことは、トーナメントを戦い抜くコンディションの面でも錦織圭にとって大切なことだ。
デルポトロとのダブルスは楽しそうな表情。
2回戦が終わったのは午後2時過ぎ。その数時間後、錦織は休む間もなく、フアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)と組んだ男子ダブルス2回戦に臨んだ。
ジュニア時代から互いをよく知る者同士だが、ダブルスを組んだのは今大会が初めて。30歳のデルポトロは、膝のけがからの復帰戦。錦織は、今回のペア結成の感想や意図をこう語る。
「うれしいですね。彼と初めて(組めて)。13、14歳の頃から彼のことは見てきて、一緒の大会にも出ていましたし。彼の方がレベルは上だったので、ちょっと上の存在、という感じでした。その頃からトップでやっていた彼とできるチャンスはありがたいので、やろうかなと」
会場が笑いに包まれた「寸劇」。
ダブルスでプレーする錦織は、実に楽しそうだ。シングルスとは重圧の掛かり方が違うからだろう。ミスをしても落ち込んだり、引きずったりするそぶりはなく、次の一球へ気持ちを切り替えられている様子がうかがえる。
相手ペアは第3シードのジェーミー・マリー(英国)/ブルーノ・ソアレス(ブラジル)組。第1セットをタイブレークの末に奪われた後、1-4と劣勢だった第2セット第6ゲーム。
錦織が放ったバックのドライブボレーが、前衛のソアレスに直撃した。錦織はすぐさまネットに駆け寄り、「ごめん!」の仕草。ソアレスは大げさに怒ったふりをし、客席は大盛り上がりした。この「寸劇」にデルポトロも参戦。錦織に大げさなハイタッチを求めると、会場は再び大きな笑い声に包まれた。
結局、ダブルスはストレート負け。それでも、錦織は満面に笑みを浮かべていた。テニスという競技を、純粋に楽しんでいるようだった。シングルスとは根本的に力の入れ方が異なることは理解しているが、この日のように心の底から楽しむ錦織の姿を、もっとシングルスでも見たい。最近は、コートの中でつらそうな顔ばかりしている気がするから。