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総年俸がロナウド1人に及ばなくても。
アタランタ、112年目で初CL目前!
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byUniphoto Press
posted2019/05/08 08:00
青と黒のチームカラーが印象的なアタランタ。欧州への扉を開けようと必死の戦いが続く。
下部組織にも名伯楽を迎え入れ。
1970年代にアタランタの選手だったペルカッシは現役引退後に実業家として富を築くと、1990年にこの出身クラブの保有権を手に入れる。当初から力を注いできたのが若手の育成で、名伯楽として知られるミーノ・ファビーニを下部組織の責任者として迎え入れた。
「若年層のサッカーを熟知していて、とりわけ偉大な人物であり、偉大な父親でした。ただサッカーの指導をしていたわけではなく、若者たちの人格を形成してきたのです」
ペルカッシがそう讃えるファビーニの下でアタランタの下部組織は機能性を高め、やがて欧州屈指の育成機関と目されるまでになる。事実、前述した選手売却による売上高の大幅な増加は、下部組織が輩出した若者たちによってもたらされたのだ。
2017年1月からインテルに所属するロベルト・ガリアルディーニ、2017年夏からミランに所属するアンドレア・コンティ、2018年夏からコンティのチームメイトとなったマッティア・カルダーラは、いずれもアタランタに巨額の移籍金を残して巣立っていったファビーニの教え子だ。
ロナウドを1得点上回るサパタ。
2015年に現場を離れて勇退したファビーニは、この4月23日に83歳で亡くなった。大きなその功績は語り継がれていくだろう。クラブは育成部門に新設する施設の名称を「アカデミア・ミーノ・ファビーニ」に命名すると決めている。
会長のペルカッシが長期的なビジョンを描き、育成責任者を長く務めたファビーニが土壌を作って、種を蒔いた。ガスペリーニは若い選手を使いながら育てる手腕に定評があるだけでなく、与えられた陣容のポテンシャルを極限まで引き出せる指揮官だ。もちろん信頼して監督を任せ続けてくれたらという、条件は付くにしても。
ガスペリーニの下で覚醒し、飛躍を遂げたタレントは枚挙にいとまがない。2013年夏からセリエAでプレーしてきたコロンビア人CFのドゥバン・サパタは、昨季までは殻を破りきれない未完の大器のままだった。それがアタランタに移籍した今季はセリエAで22ゴールを積み上げ、得点ランクの単独2位につけている(C・ロナウドの21ゴールを上回っている)。
2016年夏にフィオレンティーナがただ同然で手放したCBのジャンルカ・マンチーニは翌年の夏にアタランタに入団すると、2年目の今季は退団したカルダーラの穴を埋め、この3月にはイタリア代表デビューを果たしている。